第1話 神々の園



地上から上空へ昇ることはるか数千メートル。

そこに神々の住まう園があった。

天上界、神界、高天原、呼び方は何でもいい。

ともかくここは存在するすべての、であるということ。


空気がどうとか宇宙がどうとかは聞かないでくれ。

そこは神々の力で万事解決だ。

神々の力の前で科学は無意味な学問となる。


その地上よりはるか上空にある神々の園エデン

そこは神々の住まう園らしく緑に溢れ、水に溢れ、生命に溢れている。

それこそ地上では見られないような美しい景色がどこまでも続いているのだ。

否、景色だけではない、時間までもが永遠に続いている。

不死である神々にのみ許された空間、決して変わることのない楽園。


しかし、当然のことながら誰しもがそんな楽園に住めるわけではない。

楽園に住む資格、それは神格を持つ者であること。

それは神、もしくは神に近い存在。

つまりは神の血を分け与えられたものたちも神々の園エデンで暮らす資格を有する。

精霊や神獣、神々の子供などがそれにあたる。

それ以外の者に神々の園エデンヘの道が記されることはない。


ゆえに不変。

不自由はない。

地上の人間たちが想像しうるすべての幸せがここにはある。

地上の人間たちが想像しうるすべての負の感情がここにはない。


だがそれと同時に生きるための飢えも、活力となる刺激もない。


満たされているようで満たされていない。


すべてを持っているようでなに1つとして持ってはいない。


生きているようで生きてはいない。


神々は常にを期待している。

だがは誰にも分らない。




神々の住まう楽園にも一応すべての神々をまとめるべき存在、つまりは王がいる。

その下にそれぞれの神々がいる、というのが神々の園エデンの現状。

そんな神々の上に立つ者は神々の話し合い、平たく言うところの投票で選ばれた。

任期は地上に生まれ落ちた人の子が滅びゆくまでという神スケール。

その他大勢の神々の中から圧倒的な票数で選ばれ、王の座に君臨するのはオリンポスが一柱。


天空の支配者


自分じゃなければ誰でもいい。

面倒なことはゼウスに押し付ける、が神々の中での暗黙の了解である。

面白そうだから。


というなんとも残念な理由で選ばれたことなどゼウスはまだ知らない。



















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