『火の島』中の下

やましん(テンパー)

『火の島』 中の下の上

 なにしろ、言葉が分からないと言うのは、非常に大変なことです。


 ぼくの住んでいた国は、ひとつの言語ができれば、生活自体は困らないけれど、それではダメよ、と言う方も多い中で、そりゃあ、沢山わかる方が良いには違いありませんが、個人個人に環境の違いもあり、なかなか自然に身につけると言うのは、天才ならばとにかくも、そう、簡単ではないです。


 さらに、ここは、言ってみれば、刑務所暮らしなわけで、こうした事態は起こらないことが前提になっております。


 宇宙ゴキは、優秀な、時に、残酷な生物なのですが、意外にあっけらかんとした部分があります。


 つまり、追放してしまえば、まあ、それまでよ。


 というところで、過酷な労働を課したりは、普通しません。


 無駄な事ヨ、ということらしいです。


 とは言っても、この、くまさんに似た生き物に接触することは、明らかに双方ともに、違反行為になります。


 この場合は、厳罰になるとは聞いていますが、ドんな罰かは知りません。


 大方、厳罰と言う場合は、死刑または、最高刑を意味します。


 おまけに、ぼくが、下に降りるように、身振り手振りで説得しても、このくまさんは、もっと、上に行きたいとばかりに、手を上げて見せます。


 ぼくは、やきとりのおじさんと、反乱計画をやろうとしているわけですから、この際、朝が来たら、一緒に連れて行く気になりました。


 そこで、『朝まで寝てろ。』と、なんとか伝えて、上からは見にくい奥の方に隠して、ぼくは、そのうえで、寝たのです。


 まあ、そんな状態ですから、なかなか朝はやって来ませんでしたが。



   **********   **********



 ようやく夜が明けて、ぼくは、例の木の実を半分くまさんにやり、出発の準備を済ませると、空飛ぶ自転車の荷物入れに、くまさんを隠し、やきとりおじさんがいるはずの公園に向かったのです。


 まさか、そこに、宇宙ゴキの『パトカー』が来ているなんて、まったく予想もしておりませんでした。



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『火の島』中の下 やましん(テンパー) @yamashin-2

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