〈2〉

3月22日、火曜日。

ゴミ収集車がやってきて、慣れた手つきでゴミをトラックの後ろに放り込んでいく。

その様を僕は呆然と見ていた。これが人間と物との差。


例えそこに目に見えない命が宿っていたとしても、物は物。

こうしてゴミ捨て場に安置すれば、たちまちゴミとして扱われる。

そんな社会のルールに、この時ばかりはなんて残酷なんだろうと思った。


「ちょっと! 何してるんですか!」


決して惜しくなったわけじゃない。このまま見届けるつもりでいた。

しかし作業員が片手で彼女を掴んだのを目の当たりにし、つい口を出してしまった。

彼女を粗雑に扱うなんていったいどういう神経してんだよ。


どこか期待していたのかもしれない。作業員も彼女のことをゴミではなく、人間と対等な存在として見てくれることを。


でももう遅かった。彼女は収集車特有の仕組みに巻き込まれ、ゴミの中に埋もれていった。

そして作業員は僕のことを頭のおかしいキチガイとでも思ったのか、怪訝な表情をしただけで、僕を無視して車の助手席に乗り込んだ。



何をしているんだ僕は……。

俯けばアスファルトにこびりついた鳥の糞が異様に目についた。

まるで不甲斐ない僕を責めるかのように、鳥の糞はこれからもあり続けるのだろう。



こうして彼女の葬式はあっけなく終わった。

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