第9話 命の危機



 頼れるラスボスと、契約している契約主。


 その時は、私達の関係はそんな関係だった。


 しかし、それがもうちょっとだけ変わるのは、それからすぐの事だった。


 前期終了間近。


 学校に残っていた私は、やばい奴に出くわしていた。


 強盗だ。


 私が通っている学校は、けっこう良い所なのだ。

 お貴族様のお嬢様が多く通う学校、という事で金目の物も多くある。


 そんな所に狙いをつけたのだろう。


 どこからか忍び込んだ犯罪者と、ばっちり出くわしてしまったのだ。


 最悪だ。


 しかももっと最悪な事に、一緒にいる人間が最悪だった。


 刺激しないで、静かにその場を去れば見逃してくれていたかもしれないのに。


 目立ちたがり屋の彼女は、この状況ではあまり良くない選択肢を選んだようだ。


「なっ、何をやってるんですの! 犯罪ですわよ!」


 そう、近くを歩いていた悪役令嬢が、金目の物を持った強盗を問い詰めていたのだ。


 人としてそれは正しいけど、現実を見て!


「ちっ、騒ぐんじゃねぇ!」


 強盗は、逃げずに悪役令嬢に向かって来た。


 手にはナイフを持っている。


 おそらく、怪我をさせるつもりなのだろう。


「危ない!」


 私はとっさに彼女を突き飛ばしてかばった。


「いたっ」


 そのせいで、わき腹に刃物がかすってしまったらしい。


 床に倒れ込んだ時に、その部分がひどく傷んだ。


「どっ、どうして私をかばったり。私は貴方に酷い事をして。ああ、いやっ、血が出ていますわ!」


 遅れて痛みがやってきて、ずきずきと自己主張する。


 強盗が近づいてくる。逃げるために起き上がろうとしたけれど、恐怖で硬直しているのか体に力が入らなかった。


 悪役令嬢だけでも逃げてほしかったけれど、彼女も腰が抜けて動けないでいるようだ。


 万事休すか、と思った時。


 私の前に彼が立ちはだかった。


 そう、頼もしい私の協力者だ。


「お前は本当にポンコツだ。やはり計画が失敗したのはお前が原因だろう」


 その姿がなぜかじんわりとにじんできた。


 頼もしすぎて泣けてきた。


 だから、断じてほっとしたから涙腺が緩んだのではない。


「我が主を傷つけた報い、受けてもらおうか」


 それからはあっという間だった。


 さすがラスボス、そこらの強盗なんてワンパンだ。


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