第8話 恋の気配?
反省会をする事になった。
まだ、チャンスはいくらでもある。
学園生活の前期は終了してしまったけれど、後期があるからだ。
一年過程終了までが原作ストーリー終了の期限。
その時期になると、ヒロインが誰かしらとくっつくイベントが始まるため、悪役令嬢と元婚約者も、おそらくそれくらいにくっつくと見ている。後期終了には、カップル成立のための、恋を盛り上げる大規模イベントが起きるからだ。
そういうわけで、失敗を生かして、次の機会に望むことにした。
しかし、魔王城(私が監禁された場所)に扱って行う反省会では、両社罪を認めず、だった。
「こちらのせいじゃない」
「私のせいでもないです」
居合わせた狼男が、微妙な顔をしているけれど、ここは譲れません。
「いや、俺が微妙な顔をしているのは、醜い擦り付け合いを見ているからではなく、当然のようにお前のような人間がここにいる事なんだが」
「ちょっと黙ってろ、今このポンコツ契約主に過ちを認めさせようとしているところだ」
「ちょっと黙っててください、今大事な話をしているところです」
「あっはい」
秒で背景になった狼男は、「あれ?」という顔をして、「魔王様いつのまに人間と契約をお結びに?」という顔になっている。
目の前にいるラスボスは、怒ったような顔をしながら「そもそも」と口を開いた。
「やり返した後、お前はどうするつもりだ。ここまで来たからには最後まで協力してやるつもりだが、落としどころを決めておかねば困るのはお前だぞ」
「どうって、それは」
悪役令嬢にぎゃふんと言わせる。
元婚約者に、お説教して、見る目を改めさせる、というのがやりたい事だ。
その後は自然に元鞘に戻るだろう。
つまり元婚約者と婚約を結ぶことに?
そんな光景を想像したら、なぜか胸が苦しくなった。
なんだかんだ言って、助けてくれるお人よしのラスボスの顔が、(目の前にいるのに)脳裏に浮かんでくる。
「当初思っていた落としどころは、なしですね」
とりあえず、婚約者とよりを戻そうという気持ちが、自分にないのは分かった。
ラスボスは、私の瞳を覗き込むように顔を近づけてくる。まるでこちらの、真意を測ろうとしてくるみたいに。
「だっ、だってあきらかにあの二人、相思相愛っぽいですし、でも、最初に悪い事をしたのはあっちで、それは事実なのでやり返したいです。復讐したいです。それは変わりません。曲げたくありません」
ラスボスはそれを聞いて苦笑。
顔が近いままなので、至近距離からくらったふいうちにどきりとしてしまう。
「お前は不思議な女だな。見ていれば見ているほど、目が引き付けられる」
「そっ、そうですか」
「分かった、俺も最後まで協力しよう。これからもよろしく頼む」
なぜか今までのやり取りを見ていた狼男が、「この部屋の空気だけあつい」とか言い出したけど、どうでも良い事だった。
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