イケメン女子に囲まれる。朝山霞の学園ハーレム?

アイデアの女神に溺愛されて夜も眠れない

夕輝玲遠は普通になりたい

第1話:プロローグならぬプロフィール

 夕輝玲遠ゆうきれおんは、『天翔あまかける獅子しし』の異名を持つ、女子バスケ部のエースだ。 

 非公式の練習試合とはいえ、他校との対戦の時、開幕早々華麗にダンクシュートを決めた……のを、偶然うちの高校の新聞部が目撃し、その名が付けられた。

 今では、学校内では学年関係なく、受験生でさえも、スポーツに対し人並みに関心を待っていれば知っている、紛れもない有名人なのである。

 『天翔ける』彼女のその跳躍力を表していることは明白だ。では、どうして『獅子』なのか?

 新聞部曰く、直に対峙した対戦相手に、彼女の印象を聞いたところ、一番多かった回答が『ライオン』だったらしい。

 彼女のトレードマークである黄色いポニーテールがライオンの立髪に見えるのだろうか?(ポニーは馬で、テールは尻尾で、そもそも立髪を持つのはオスライオンだけだが)。それとも、凛々しい顔つき、鋭い目つき、俊敏な動き、全身から醸し出す威圧感などが、そう見せているのだろうか?

 ところで下の名前の『レオン』とは、ラテン語でまさに『ライオン』を意味するのだが、それに気付くような学のある人間は、この学校にはそういないだろう。

 バスケ部の後輩からは、レオ先輩やレオン様、獅子王などと呼ばれ、慕われているらしい。

 そんな有名人である彼女と、この僕、朝山霞あさやまかすみは、本来、関わるはずがなかった。

 しかし、最近、距離が近くなる出来事があったのだ。

 高校2年になりはや1ヶ月、このクラスで、初めての席替えである。

 最初の、出席番号である席配置では、朝山と夕輝、『あ』と『ゆ』で、ほとんど対角と言って良い位置関係だった。

 それが、席替え後、なんと隣同士になったのだ。

 それも、窓際の列の最後尾の席という、多くの学生にとって理想とされる場所だ。

 教師の目も、他の生徒の目も届きにくいこの場所。そこに、男女のペアが配置される。

 邪魔されない場所、隔絶された空間、2人だけの世界。

 もうお分かりだろう、そう、僕は、彼女と、物理的に距離が近くなったのだ。

 ちなみに、席替えから一週間、一度も会話を交わしたことがない。

 というか、学校に来ているところさえ見ていない。

 肉食獣の血を引くような彼女と、血を抜かれた小動物のような僕では、釣り合わない、どころか、住む世界が違うと言うことを、暗示されているのかもしれない。

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