第21話 その声に合わせて斑の拳の動きが
その声に合わせて斑の拳の動きが止まったみたいだ。そこですかさず斑の拳を止めようと手が横から伸びてくるのが見えた。
「その辺にしときなさい!!」
ミキの手が斑の拳を掴んで止めたのだ。
(助かった……)
ミキとヤミを見ると、ミキの目は真っ白、ヤミの目は漆黒に染まり、それぞれの瞳には手の甲の紋章が浮かんでいる。
斑の拳を掴んだミキの手からは斑と同じように白色の陽炎が立ち上っている。
(活神眼?! 波紋領域展開を使ったのか……??)
どうやら二人は神の力を一部開放したみたいだった。それも波紋領域の範囲を手の平に限定して展開しているみたいだ。なんて器用なことを……。
でも、それをみんなに見られたら……?!
「嘘、鼻血が出ている?!」
でも、俺の予想に反して周りの反応は違った。どうやら昨日机にぶつけられてまだ右目が腫れているし、鼻血に注目して、他の人はこの虹色の瞳や二人の目の色には気が付かなかったみたいだ。
んっ、鼻血? 鼻の奥からツーと生暖かいものが滴たり落ちる感触が……。
「ザギリさん、鼻血が!!」
ミキがそう言って、テッシュを取り出して、俺の鼻に詰めてくれる。そして、ヤミは首の後ろを手刀でトントンと叩いてくれる。
ヤミ、それで鼻血が止まるのは迷信だから。
「ザギリさん、保健室に行きましょう」
そのまま、俺の手を取って教室を出て行こうとするミキ。
「なさけねえな! 女に助けられて逃げるのか?」
それを聞いた俺に寄りそうっていたヤミが、後ろを振り返り一言。
「斑、このままで済むと思うなよ!!」
そう言って、中指を立てている。
そういう雑魚キャラが吐く捨てゼリフはその奇麗な顔にはNGです。
だが周りはそうとは思っていなかったみたいで……。
「ヤミ様。斎藤の仇を取ってやってください!!」
斎藤って誰だ?
ヤミはそれには答えず、後ろ手に手を振っていた。
そして、二人に連れてこられた保健室。
そこには保険の先生はいなかった。でも、ミキとヤミには予定通りだったみたいだ。
ミキがベッドを指さして言った。
「そこのベッドに座って」
「大丈夫だって、鼻血なんてすぐに止まるから」
「いいから座って。話したいことがあるの」
真剣な銀色の眼差しに思わずたじろいでしまう。
ベッドに座った俺の前に、パイプ椅子を出して来てミキとヤミが座ったのをみて、俺は話しかけた。
「ミキ、何の話なんだよ」
「信じられないけど、斑のからだに沿って、一回りでかい灰色の陽炎のようなものが纏わりついていて、パンチの度に、その陽炎が斑の体に突き刺さっていた。
あれは、器からはみ出た波紋領域だと思う」
「ってことは、斑も神の生まれ代わり?」
「と考えるしかないわね。わたしが出した波紋領域と互角以上の力が込められてた」
「だから、寸止めなのにあんなに痛かったんだ?」
「ザギリさん。気楽に言わないでよ。あの状態であなたを傷つけられるって……、異常なことなのよ」
「そうだそうだ。あの外部を傷つけず内部を破壊する拳法は中国拳法一子相伝の……」
「ヤミ、茶化さないで」
「いやあ、わりぃ。あいつに斎藤がやられたらしいから」
「斎藤って誰だ?」
「ザギリ覚えてないのか? 昨日、お前と斑に絡んでた柔道部の奴だよ」
昨日、斑と話をしていた時に絡んできたガタイのいい親衛隊長みたいなやつの事か? そう言えばさっき仇を取ってくださいとミキは言われていたな。
「ああっ、彼か?」
「そう、斎藤君は全国大会ベスト8の柔道の猛者なの。その彼があの斑って人に手も足もでず、一方的にやられたらしいの。しかも外傷はほとんどないのに、複数の内臓に損傷があって、昨日から入院しているの」
「それは、どういう?」
「あたしも直接見たわけじゃなかったけど……。生徒会でも見ていた生徒に事情徴収したんだけど、ふざけ合っているようにしか見えなかったって……。捕まえようとする斎藤の腕を躱し、ジャブを寸止めで入れて斎藤をからかっていたんだって。だから、斎藤の怪我は原因不明として処理された。
でもザギリがやられたのを見て分かった。間違いなく北〇神拳だ」
「ヤミ。北〇神拳が何なのかわからないけど、神の拳だと云うのは納得だわ」
ヤミだけじゃなくミキまで神拳と云うのは納得なんだ。
「いやいや神拳って、マンガじゃあるまし!」
「ザギリさん、もし、ヤミが止めなければ、あなた、間違いなくボコボコにされていたんだよ」
「だけど全部寸止め、ボクシングかプロレスの真似事でふざけ合っていたで終わりだぞ」
「そこは二人に感謝なんだけど……」
「おかげで私の手、骨が折れたみたいです」
「えっ、活神眼によって神の力を開放したのに……」
「ええっ、光の力は絶対防御のはずなんですが……。なんですか? そんな顔しないで。私、回復魔法は得意なんですよ」
そういって、ミキは笑っていたが……。俺を助けるために、ミキが怪我をしたんだ……。
俺は目を伏せて、両手を握りしめていた。
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