尻軽女と中学教師

あべせい

尻軽女と中学教師


 巨大ショッピングモールのエレベータの中。

 乗っている人は定員のほぼ半数の5、6名だが、こども連れだったり、ショッピングカートを押している女性客が数組いるため、満員状態だ。

「降りるよ。グズグズしてンじゃないよ。さァ早くッ!」

 エレベータが2階に停止した。

 休日のせいか、ドアが開くと、中にいる人以上の人がエレベータホールで待っている。カートを押しながらの、小さな子ども連れも2組いる。

 その中のひと組の親子が、カートを押しながら、開いたばかりのドアからエレベータ内に入って来ようとする。

 すると、エレベータの中でも、カートを押している親子連れが、無言のまま外に出ようとする。

 このため、エレベータのドア付近で、対抗する2台のカートが正面衝突の形で、激しくぶつかった。

「イタィッ!」

「ナニするのヨ!」

「こっちが先でしょ」

「ナニ言ってンの。こっちが先ヨ。出るほうが先に決まっているじゃない!」

 すると、エレベータ内にいる周囲の買い物客から、

「出ないと入れないわね」

「先に降ろしていただかないと……」

「そうですね」

 冷静な男女の声がした。

 外からエレベータに乗ろうとして、2人のこどもを連れてカートを押していた主婦は、ようやく形勢不利とみてとったか、

「出るのよ。出なさいって、中のひとが意地悪を言ってンだから。さァ、早くしな!」

 と言い、顔を歪めながらこどもを叱りつけ、後ずさりした。オシャレなのか、単に寒いせいなのかはわからないが、主婦の首筋には、真っ赤なネッカチーフが巻きつけられている。

 エレベータ内から、4、5名の客がいずれもホッとしたように、ぞろぞろと外に出ていく。

 と、それまでぴったりくっついていた30代カップルの男性のほうが、顔を伏せるようにして進み、連れの女性から離れていく。連れの女性は怪訝そうに、男性を目で追った。

 2人がカップルと見えたのは、気のせいなのか。偶然エレベータに乗り合わせた男女が、ぴったり寄り添っていたため、傍目には仲のいいカップルに見えただけなのか。知らない人間は、ついそう思ってしまう。

 しかし……。

「どうしたの?」

 連れの女性が、先を行く男性に追い付き、彼の脇の下を人差し指で小突きながら、そう言った。

 すると、男性は、前を見たまま、

「まっすぐ歩いてくれ。どこかで会った気がする、おしゃべりがいた……」

「エッ」

「いまエレベータで、カートを押したまま乗ろうとして、押し戻されたこども連れの主婦だ。まだ、こっちを見ているかもしれない」

 そのことば通り、カートを引いて後ずさりした主婦は、エレベータに乗ることをやめ、遠ざかって行くカップルの後ろ姿を、エレベータホールから興味津々といった顔付きで、まだ見ている。主婦の首筋の真っ赤なネッカチーフが目を引く。

「あら、ホントだわ」

「見るなと言っているだろッ」

「平気よ。そこの鏡で見ているだけよ」

 2人が進む通路は、両側が衣料品売り場で、通路側にいくつか姿見が置かれている。女性は、その一つを覗いたのだ。

「ダメ。行きましょッ。あのおしゃべり、わたしと同じ鏡を見ている。顔を見られちゃった」

 女性はそう言い、男性を追い越して、先を急いだ。

「待てよ」

 男性は小さな声を発し呼び止めるが、追いかけはしない。速度は変えず、ゆっくりした歩調でいく。まだ、おしゃべりが見ているに違いないからだ。


 男性は、菅谷波夫(すがやなみお)42才。中学校の英語教師。女性は、多華左紀(たかさき)35才、役所の住民課の職員だ。

 その日、2人は2人の住まいからほぼ等距離に位置する、このショッピングモールで会う約束をした。3度目の不倫デートだ。まだ深い関係にはない。波夫は強く望んでいるが……。

 待ち合わせ場所は、フードコートだった。すでに食事は終えている。

 このショッピングモールから2人の職場までは、私鉄駅で3駅離れているうえ、それぞれの自宅まで等距離と言っても、車で20分近くかかる。だから、知り合いに会う心配はない、とタカを括っていたのだが、このざまだ。

 波夫は、3ヵ月前から別居しているとはいえ、妻も子もいる。こどもは中学1年生の娘と、小学4年の息子だ。妻の貴子(たかこ)は4つ下の38才。

 別居の理由は、価値観の相違がどうしようもなくなったためだが……。

 2人は互いに一目惚れして、出会いから3ヵ月後に結婚した。両家の両親をはじめ、周囲は早過ぎると心配したが、結果的には、その不安が的中した。

 結婚した当初は、互いに遠慮があったのだろう、意見の相違は余り表面化しなかった。しかし、結婚生活を重ねるにつれ、2人の溝は徐々に深くなっていった。

 そして、決定的になったのが、ことしの知事選挙だった。

 貴子は革新系の候補に投票したのに対して、波夫は保守系の候補に一票を投じた。4年前の知事選の際は、どの候補者に入れたかについては、互いに何も言わなかった。元々、結婚以来2人の間では、政治的なことは話題にならなかった。もっと正確に言えば、2人は選挙自体を話題にしなかった。

 しかし、今回は、貴子がふと洩らした次のようなことばから始まった。

「夫婦って、ナンなの? わたし、近頃つくづく思うの。これでいいのか、って……」

 その朝、居間でゴルフクラブの手入れをしていた波夫は、いつもの愚痴が始まったかと思い、この日楽しみにしている計画に水をさされた気分になった。

 すでに、このとき波夫は、多華左紀とひそかにつきあいを始めていた。この日は、2人にとって初めてのデートだった。

「どうした? これからゴルフに行くンだから、難しい話はダメだぞ」

 波夫はそう言ってわざとらしく、腕時計を見た。約束の時刻まで、30分しかない。車の渋滞を考えると、あと5分で出かけたほうがいい。

「昨日職場で、同僚の塚元(つかもと)さんから、言われたの」

「ナンて?」

 塚本は33才の独身男性で、貴子がパート勤務しているスーパーの同僚だ。貴子は、彼が好意以上のものを寄せていることを、最近強く感じている。もちろん、2人きりで話をしたことは、まだないが……。

「彼は今年中に結婚したいンだって。でも、結婚って楽しいのか。恋愛が楽しいのはわかるけれど、結婚の楽しみって、何だろうか、って言うの。そう言われて、わたし、考えちゃった」

 貴子は、夫の不倫を薄々感じている。急にゴルフを始めたのが怪しいし、打ちっぱなしのゴルフ場だと言うが、この辺りでそういう施設は見たことがない。車で30分以上走ればいいのだろうが、コースでもないのに、夫はそんなに遠くまでゴルフの打ちっぱなしに行くだろうか。

 しかし、貴子は、詳しく聞かないでいる。彼女には、彼女なりの、妻としてのプライドがある。

「何を考えたンだ。おれは、そろそろ出かけないと。休日の打ちっぱなしは、予約時刻に行かないと、勝手にキャンセル扱いされる」

 波夫はクラブをゴルフバックに入れ、クローゼットから出してきたジャケットとズボンに着替え始めた。

「わたしたちって、こどもを育てることだけで一緒にいるンじゃないか、って。だって、そうでしょ。セックスもマンネリだし、趣味は違う。あなたはアウトドア、わたしは家にいるほうがいい。テレビのチャンネルだって、あなたが我慢しているのはよく知っている……」

「もう少し小さな声で話せよ。2階にこどもがいるンだゾ」

「2人とも、朝早く出かけたわ」

 波夫は、イライラし始めた。彼女を待たせたくない。

「わたしたち、趣味が合わないだけじゃない。考え方も違う。価値観が違うのよ。あなた、こんどの選挙でだれに入れるか、もう決めている?」

「いや、考えたこともない」

「そうでしょ。わたしは、もう決めた。革新よ。あなた、政治の話は、滅多にしないわね。どうして?」

「どうして、って。関心がないからだ」

「関心がない、って。あなたは中学の教師でしょ。それで教育者のつもり?」

「オイ、いい加減にしろッ。せっかくの休日に。ケンカを売っているのか。おれは、出かけるからな。夕飯はいらないから」

 波夫は、そう言い捨てて左紀の待つショッピングモールに急いだ。

 その夜、貴子は帰宅した波夫に、寝室で、いきなり、

「準備出来次第、別居します」

 と、告げた。

 突然のことで、波夫は驚いたが、価値観の違いは彼自身も感じていた。しかし、その違いをうまく埋め、折り合っていくのが結婚生活だ、と彼は考えている。

 貴子は、勝ち気で、こうと言ったら引かない性格だ。一度、別居して冷却期間を置くのも、長い夫婦生活には必要なのでは、と波夫は考え、承知した。

 それに波夫は、左紀との不倫を進展させたいという楽しみがある。この日は、一緒に夕食をともにするだけで終えていたから、まだまだ先がある。

 別居は、波夫が別にアパートを見つけ、一人で引っ越すことにした。いまの戸建ての家は、まだ10年以上ローンが残っている。名義は、2人の共有だ。いずれ、別居は解消するだろうから、それ以上のことは考えるだけ、無駄だ。そのとき、波夫は、そう結論を出した。

 

 左紀は波夫を連れ、赤ちゃん用品の専門店に入った。

 波夫は、押し黙ったまま、左紀の後についていく。左紀は、産着や負い紐、粉ミルクなどを丹念に見ている。

「あなた、何色が好きなの?」

 左紀が、壁に掛かっているさまざまなタイプの負い紐を見上げながら言う。しかし、波夫の返事はない。

「あなた、聞いているのッ」

「アッ、ごめん。なんだっけ?」

「いやね。赤ちゃんを抱っこするときに使うベビースプリング、抱っこ紐よ。どれがいいと思う?」

「エッ、赤ちゃん!?」

 波夫は心底、驚いた。

「赤ちゃんって、オレ、いやぼくたち、まだ何も……」

「あなた、何も、って、ナニ?」

 左紀はわかっているくせに、薄ら笑いを浮かべながら、とぼけている。

 波夫は、きょうはそのつもりで来たンだ、と言いたいのをグッとこらえた。

「左紀さん、『あなた』って呼ぶのはやめてくれないか」

「エッ、どうして? いけない?」

 左紀は、初めて戸惑った表情をした。

 波夫は、周囲にひとがいないのを確かめてから、小声で、

「ぼくたち、まだ……。ぼくは、キミの手を握っただけだよ」

 左紀は、俯き加減に、鼻に人差し指をかざしながら、クスッと笑った。左紀が、自身でもっともかわいいと思っている、得意の仕草だ。

「もっと親しくなるまで、『あなた』と呼んじゃいけないの?」

「うーン」

 波夫は、自分でも言っていることがバカげていると気がつき、返答に困った。

「だったら、もっと親しくなる? これから……」

 左紀はそう言って、波夫の二の腕を、胸でそっと触れた。

 波夫の全身に快感が走った。と同時に、彼は、さきほどまで囚われていた考えに立ち返った。

「それより、気になっているンだ。さっきの主婦……」

「あァ、あのおしゃべりオバさんのこと?」

「家の近所で見た顔に似ているンだが、どこのだれなのか、よく思い出せない」

「あなた、いまアパート暮らしでしょ」

「だから、アパートの近くじゃない。女房と住んでいた家の近くの住人だ。相手はぼくのことを知っている。それは間違いない。あれだけ反応したンだから」

「困るの?」

「ぼくは中学の教師だ。妻以外の女性と一緒にいるのは、教師として不適格だと言われかねない」

「わたし、あなたの奥さんには見えなかったのかしら」

「あの主婦は、ぼくの女房の顔を知っているのかも知れない。すると、なお、厄介だ」

「厄介、って?」

「女房に知れる」

「奥さんにバレたら、離婚しやすいじゃないの?」

「離婚?」

 波夫は「離婚」など、考えたことがない。例え、左紀とどんなに深い関係になっても、離婚は考えないだろう。

「あなた……」

 左紀は波夫の眉がピクつくのを見て、

「ごめんなさい。波夫さんは、離婚を考えたことがないのね」

「そんなことはない。しかし、こどもには、こういうことは知られたくない」

 波夫はうまく擦りぬけた。いまこどものことは、彼の眼中にはない。気になるのは、職場だ。教師という立場だ。

「そうね。お子さんは大事だものね」

 左紀も自分のこどもを考えないことはない。早くこどもを作りたいと思う。だから、赤ちゃん用品には関心がある。しかし、こどもの父親にはどんな男がいいのか。

 左紀は、これまで4人の男と関係をもった。そのうちの1人は、職場の上司だった。彼にも妻子がいた。

 彼は妻子を捨てて、一緒になろうと言ってくれた。しかし、左紀は彼との1度の肉体関係で、彼のことがイヤになった。10才も年下の女の体に狂い、即座に家庭を壊そうとする男に、人間としての誠実さが感じられなかったからだ。

 その後デートの誘いを断り続けると、彼は同じ部下の、ほかの女に乗り換えた。その女はバツイチで、彼に結婚を迫った。そして、半年後、そのことが家庭と職場にバレ、彼は同時にその両方を失った。

 だから、左紀は思う。不倫するような男と家庭は持ちたくない。彼女がいま波夫としていることと矛盾するようだが、波夫のこどもを作る気は、さらさらないということだ。

 波夫は、お遊び。男を研究する材料のつもりだ。何が哀しくて、この程度の男と関係をもたなくてはいけないンだ。すると急に、この場に一緒にいることさえ、うとましくなってきた。

 わたしには、もっといい男がいる。もっといい男が必要なのだ、と。

「もう帰りましょうか」

「エッ、どこへ?」

 波夫は、左紀が何を言っているのか、理解出来ない。

 そのときだ。

「アッ、左紀さん、まずいッ」

 波夫が、胸の前で人差し指を折り曲げ、自分の背後、すなわち店の外を指差している。

 左紀は、目を静かに左右に走らせた。

 アッ……。いたッ。さっきの主婦が。首筋の赤いネッカチーフが目印だ。

 こんどはひとりで柱の陰から、こちらを覗いている。こどもとカートはどうしたのだろう。だれかに預けて、わざわざ後をつけてきたとしか思えない。

「しつこい、ババアだ」

 波夫が、憎らしそうにつぶやく。

「ババア」だ!? 左紀は自分も職場で、そう陰口をたたかれたことがある。女性をババアと呼ぶ男は、ジジィじゃないか。左紀は、波夫の悟りきったような横顔を見て、たまらなく不潔に感じた。

 35才は、20才過ぎの女性から見れば、確かにオバさんだろう。役所の窓口にくる多くの男性は、左紀よりも若い職員が応対してくれることを望んでいる。

 特に年配の男性は、その気持ちを露骨に出す。左紀は、実際50代の男性が住民票を請求するだけなのに、

「もっと若いひと、アッ、あそこにいる若い女性、うちのことは彼女でないとわからないと思うンだ。ちょっと、彼女を呼んでいただけませんか」

 と、目の前で告げられ、交替を強いられたことがある。

 あんなことは、10年に1度あるかないかの、稀なことかも知れないが、とても強いショックを受けた。

「波夫さん、あの主婦のこと、まだ思い出せないの。首にあんなに目立つ、真っ赤なネッカチーフを巻きつけているのよ……」

 そォだ。赤いネッカチーフ……左紀は自分で口に出してから、急に気になり出した。赤、赤、赤……赤いチーフ……。

 そう言えば、先週、役所の窓口でちょっとしたトラブルがあった。

 左紀より5つ年下の同僚、河枝(かわえだ)が応対していた住民から、突然大声が聞こえたのだ。河枝は、左紀が日頃、若くてすてきだと気になっている独身男性。

「だから、さッ。あんたじゃわからない、って言ってンだろうがッ。責任者を出せ、って!」

 戸籍課の窓口でどなっているのは、40代半ばの主婦だ。左紀は彼女をチラッと見てから、河枝が気の毒になった。しかし、課が違う。人妻である左紀が、独身の河枝に加勢するのは、後で何かと職場の噂のタネになってしまう。

 すると、同じ戸籍課の若い女性が、河枝の背後からそっと現れ、

「奥さま、その住民票の申請は私がお受けしたものです。こちらではお話ができません。申し訳ありませんが、あちらにお越し願えませんでしょうか」

 と、丁寧な口調で言った。

 後でわかったことだが、その主婦が受け取った住民票には、必要のない本籍まで記載されていたため、再発行して欲しいという苦情だった。

 河枝を助けた女性は人妻だが、河枝と同い年。2人はこっそりつきあっている、という噂がある。それはともかく、彼女の気転でトラブルは収まったが、そのクレーマー主婦の首筋に、真っ赤なネッカチーフが巻き付けられていた。

 あの女だッ! 左紀は、あのとき、河枝と噂のある女性に誘導されて、クレーマー対応に設けられている応接室に向かう主婦の顔を、軽蔑気味にチラッと見た。

 その瞬間、彼女の視線とまともにぶつかってしまった。左紀は慌てて、視線を外したのだが……。

 そうか。彼女はわたしを見知っている。

 左紀は、柱の陰から、赤ちゃん用品専門店に、視線を走らせてくるネッカチーフの主婦が、波夫を尾けてきたのではなく、わたしを尾行してきたのだと悟った。

 役所の30代過ぎの独身女が、妻帯者らしい男と密会している。役所で、尻軽女と噂されているわたし……。左紀は、職場で、結婚していない30女は、自分だけだと自覚している。

 男を選び過ぎた結果と考えているが、世間は、そうは見ていない。男遊びがやめられないバカ女。

 波夫と知り合ったのは、役所の窓口に来た波夫から、窓口のカウンターで、名刺大の紙切れを、トランプカードを滑らせるように、サッと手のひらの中に押し込まれたのが始まりだった。

 その紙切れには「お会いするのは、きょうが3度目です。この番号にお電話いただければ、いつまでも待ちます」とあり、携帯の電話番号が書き添えられていた。

 仕事中、しかも衆人監視のなか。こんな大胆な誘われ方は初めてだった。だから、面白くて、彼の誘いにのった。それが、妻子のいる中学教師とは思わなかった。波夫は、隠さずに最初からその事実をありのままに打ち明けた。それは彼なりの計算だったのだろう。

 その後は、よくあるつきあいが始まった。肉体関係を除いて……。

 左紀は、あの赤いネッカチーフの女は、一緒にいる波夫が中学教師であることをすぐに突き止めてしまうだろう、と思う。そして、わたしの尻軽女の噂はさらに広がってしまう。この際、この場で、なんらかの手を打つべきではないだろうか。

「先生ッ!」

「エッ」

 波夫は、先生と呼ばれてびっくりした。プライベートで、しかも密会の場で、そのような呼ばれ方は初めてだ。

「先生、ご依頼の用件が済みましたので、わたくしはこれで失礼します。こちらの店は、先生のお子さまにぴったりのお洋服がすべて揃うと思っております。では、お元気で……」

 左紀は大きな声で、そう告げると、呆気にとられている波夫を残して、さっさと店を出た。

                   (了)

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尻軽女と中学教師 あべせい @abesei

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