知らずのうちに
三分の一ほど読み進めた
大好きな彼から借りた本
読書の楽しみのひとつは
ページがめくられるとき
鼻腔を通っていくにおい
ここでも試そうと思った
この本から彼のにおいを
嗅ぎつけられるだろうか
ページをめくり終えた後
鼻を紙面に近づけてみる
鼻には何も届かなかった
この本は纏わないらしい
目を凝らすと見つけた跡
本を傾けるときらめいた
一文字分くらいの大きさ
鼻先のファンデーション
これは中古だったろうか
嫌だったらごめんなさい
次会うときまでに続きを
私が読んだというしるし
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