蠹毒(残酷表現あり)

 彼女が放課後の教室で一人、蝿を潰していた事から既に異常性は見られたのだ。蝿ほどすばしっこい虫を放課後居残ってまで執拗に殺しにかかるのは今思うと変わっている。「汚い」とは彼女の言い分だが普通放っておく。


 家に遊びに行った時も、ネズミ捕りにかかったネズミを包丁で執拗に突き殺した。「ネズミの死体って意外と重いんだよ」無理に持たされたネズミ入りゴミ袋はズシッと重力を伝えた。


 それから鳩、猫、野良犬と彼女の標的はどんどん大きくなり、最近は「貴方も、汚い?」と時々問われる。「お風呂には入ってるから汚くない」と誤魔化しているが、彼女に触れでもしたら「汚い」と刺し殺されて、彼女の手は僕の命まで届くのだろうか。




 Twitter300字ss第七十五回お題より……「届く」(本文298文字)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る