「おかしのにおいがする！」

　弟がはしゃぐので、あたしも辺りの匂いを嗅いでみた。なるほど、確かに甘い香りがする。でもお菓子か？この匂い。

「コレからにおう！」

　弟は植え込みの白い花びらを一枚むしって口に入れる。

「おいしくなーい」

「あったり前。ペッてしな」

　木の枝に掛けられた名前は、山梔子。

「なんてよむの？」

「クチナシ。上にフリガナあるよ」

　大きく書かれた読めもしない漢字にウンウン唸る弟に教えてやった。なんとなくお菓子が食べたくなって、ポケットを探る。

「あっ！おんなじあじ！」

　なるほど。弟お気に入りのガムの成分表には『クチナシエキス』と書いてあった。　

Twitter300字企画第二十一回お題より……「子」（本文270文字）

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい