色欲食欲

 徹夜で大学の講義のレポートを書いていたオレは、大変な寝不足であった。ふわあ、とあくびを一つ。レポートは自宅からパソコンを通じて提出したので一安心である。今日は取ってる講義も午後に一つだけだし、ひと眠りしたいのだが、疲れすぎて眠れない。適当に何か食べてお腹を満たせば眠くもなるだろうと思い、部屋を出た。親元離れて借りているアパートは狭いが、一応台所と一体になったリビングくらいはある。


 そこにおっぱいが落ちてた。


 違った、彼女が寝てた。昨日うちに遊びに来たはいいのだが、オレが取ってた講義のレポートの提出日が今日だったため、邪魔しなければ好きに過ごしていていいからと彼氏らしからぬ態度で彼女を部屋から閉めだしたのである。寂しい寂しい~!! とネコちゃんのようにドアをひっかく音がしたが、オレは心を鬼にしてレポートに専念したのだ。終わったら好きなだけイチャつけるからな。


 というわけでおっぱい彼女が落ちているわけだが。自慢だが、オレの彼女のおっぱいはデカい。顔も可愛いのになまじ顔が癖のない整い方をしてないものだから、人によってはおっぱいしか覚えてないなどと失礼な事をのたまうほどだ。まあ今日のオレも彼女の子どもっぽい寝顔とか差し置いておっぱい見てるけど。徹夜明けだし許してほしい。


 テーブルにはしょうゆ差しがあり、(王道の赤い帽子を被ったくびれているやつ)メモが置いてある。いつでもメモのしょうゆかけを食えるって寸法だ。デザートにまんじゅうも置いてある。


 メモにはこうあった。『おまんじゅうと私、どっちを食べるか自由に選びなさい。なお私は今食べられようとしたら反撃するくらい、構ってもらえなくて拗ねています』


 究極の二択であり、見えている地雷である。徹夜明けで腹は減っている、昨日イチャつけなかった分彼女を堪能もしたい。


 オレは結局無難な選択をした。彼女がいつの間にやら買って来たらしい緑茶を入れ、どうせ狸寝入りだろうとマグカップも二つ。


「なかなか君もわかってきたじゃないのっ」


 既に正座してお茶を待っていた彼女は、和菓子には緑茶、まんじゅうは過激派の粒あん至上主義なのである。オレはなんとか二択を両方選べないものだろうかと、茶をすすりながら今後の予定を思案した。



第109回・フリーワンライより……睡眠時間が足りてない ご自由にお持ちください ハニートラップ 無難な選択 過激派の粒あん至上主義

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る