小さな現代~現代ドラマ・日常掌編集~

豆腐数

彼女の足

 足の爪を切るのが下手くそで、爪のかどっこの部分ばかり残って伸びて、しまいには痛がる彼女の代わりに、爪を切るのが習慣になっていた。我ながら男のくせにまめまめしい奴だと思うが、恋人の為に尽すのは悪くない。ソファーに座った身体から伸びる白い股、脛。彼女は僕と会う日は、いつもスカートを履いてセクシャルなアピールしてくれる。その先についた、誰も履けないガラスの靴がはまりそうな足。桜貝のような爪の白い部分が伸びているのをパチパチと切っていく。切り過ぎないよう、目を細め、注意深く。全てが終わると、いつも彼女の足の甲にキスをする。僕は彼女の忠実なる騎士である。


「それ、親父くさい」


 僕が気取ると、彼女はいつもそうやって一刀両断する。騎士よりも鋭い、姫の剣。僕が調子をこいてかかとの辺りをくすぐると、彼女は僕の顔に足を当てた。ちょうど足型のスタンプを押すように。彼女の足はひんやりと冷たく、素敵な生命の香りがした。



お題……足(pixiv毎日お題より)

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