石橋を叩いて渡らない

「いいかお前、何事も慎重にいくんだぞ。石橋をたたいて渡るようにな」


 父の口癖はいつも決まっていて、言葉も尊大だった。万年係長の中間にいるからか、家の中では大体そうなのだ。


「何やってるんだ、早く来なさい」


 クソ親父が橋の上で、母と一緒に私を急かしている。私は手に持った100トンハンマーで石橋を叩いた。カービィとかシティハンターのヒロインが持ってるようなアレだ。


 父の教えを語るように、大きな橋は見事に崩れて行った。呆けた父と母が川の水面に落ちていく。三途の川なんて二人だけで渡りなさいよ、気持ちが悪い。バァカ。




 Twitter300字企画第六十六回お題より……「橋」(本文288字)


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