遊んでやりたいんだがねぇ

「お兄さん、遊びましょ」


 道端。人気がない場所を通る、中年になりかけのくたびれた青年に話しかけるソプラノ。小さな女の子だった。ボールを持って立っている。


 ──やなこった。


 男は一言も返さず横切った。大きな通りに出る。雑踏。たくさんの人間が歩いて喋って、安心する。


「生きてる人間なら少し遊びに付き合っても良かったんだがな」


 女の子の持っていたのは誰かの頭蓋で、足はなかった。甘い顔をした瞬間、次のボールは自分の頭だ。見える性分、可哀想には思う。だけどこっちも、命は惜しい。


「くわばらくわばら。近道なんかすんじゃなかったなあ」


 くしゃみを一つ。男は雑踏に紛れ、見えなくなる。


Twitter300字企画第四十二回お題より……「遊ぶ」(本文280文字)

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