第68話 皆既月食作戦 Ⅱ デリー入城
ムガル帝国首都デリー首相官邸
昇(のぼる)達、C分隊のメンバーと第五連隊の隊員はムガル帝国首都デリーに入った。
警察と軍による検問が設けられバリケードが置いてあり今は、まだ抗議デモなどが行われていないが付近に居る住人の目が怖かった。
現在の政府はデリー南にある48号線と44号線の高速道路のジャンクションに展開しており抗議デモを行う団体はSangam Vihar(サンガムビハール)の町に居るとされる。
既に高射砲と対空機関銃の配置も完了しておりあとは逃げ出すだけだった。
「初めまして、あなたが長篠(ながしの)昇伍長ですね?」
「はい、あなたは?」
「時間がないので歩きながらお話いたします。南部での地上部隊の動きが活発になりました。」
「部隊?相手は武装勢力じゃなくて?」
「ええ、ソフィア様が言うには他の基地の軍人が革命派と繋がっていたと言っていました。」
「敵の空軍は?」
「いえ、まだ動きがありません。」
「そうか…。」
「あの一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「はい、なんですか?」
「ええ、あなたの年齢をお聞きしても?」
「あっ、はい…。17歳です。」
そう昇が言うと、昇は自分の年が何歳なのか考え始めた。
まず、誕生日が7月25日で航空祭が11月3日だったから17歳で…ちょうど今が12月くらいだから…ここに来てだいたい7ヶ月超だから…まだ17歳だな。
とりあえず、そうだ。
「そうですか、地下室の中ではタバコは吸わないでくださいね。」
「ご心配なく。」
「それはよかった。」
ネイルー記念博物館で昇達は車を降り、Victoria(ヴィクトリア)、Sophia(ソフィア)の護衛についている兵士に案内されるまま彼女達のもとに向かった。
彼女達がいたのは巧妙に隠されている地下室の一室で他にも複数の部屋があった。
彼は、戦闘服ではなく礼服を纏っており一緒に逃げる気はなさそうだった。
しばらくして、彼女達が居るという鉛と合金でできていそうな重厚なドアの前に着いた。
彼は、扉を叩き大声で私達が来たことを伝えた。
すると、扉が開かれ銃剣をつけたリー・エンフィールドを持つ兵士が居た。
「では、長篠様はお入りください。他の方々はここでお待ちください。」
「それじゃあ、ロラと中山はここで待機を。」
「了解しました。」
「はい、伍長。」
「ああ、私としたことがすいません、ライフルとお背中の荷物はお預かりします。」
「それじゃあ、よろしく。」
「はい、お任せを。」
部屋の奥に彼女達が居た、一人は肩ぐらいまでかかる金髪で碧眼の赤いドレスを着ている少女でもう一人は栗色のような25歳くらいの女性で黒色の衣装を身にまとっていた。おそらく金髪の方がソフィアでもう1人がヴィクトリアだと思った。そして、その通りだった。
「初めまして、私は…。」
「ええ、ドルマーから聞いていますわ。長篠昇殿。私は、ソフィア。そして、この方がヴィクトリアよ。」
「初めまして、ヴィクトリア様。」
「ええ、初めまして…。さて、それじゃあはじめましょうか…。ソフィア。」
「はい。」
「わたくしとしたことが、彼はアブドゥル・カリム。生前わたくしの従者を努めていた者ですのでご安心ください。他にも、何人かわたくしの生前に関係のあった方々が居ますがお気になさらず。」
「そうですか…。」
「少なくとも、今は私の肩書を気にしないでください。この世界の出来事を人に話したところで信用されませんし、このムガル帝国を治める者として創世記に定められた通りにこの日を迎えることができました。私の役目を終えるときが来て後は待つばかりです。」
「それは、少々早い話だと思います。まだ、この国を出ていないのに…。」
「…いえ、もともとこうなっていましたから。…どうやら、まだ話してはいないようですね。ソフィア?」
「はい…ですが、ヴィクトリア様…これは致し方のないことでご承知のはず…。」
「ええ、少しあなたをからかってみました。」
「…意地悪ですね。」
「まあ、あなたが昇さんに高圧的な態度でいらしたので…。」
「そんなことはありません。」
「ふふっ、さて…本題に入りましょうか。明日は、私も防弾着を着て逃げますので問題にはならないと思います。それに、この数千年で知恵もつけましたし何より身体も若い頃のものですから…。後は、魔女だけですね。」
「魔女?」
「はい、Sara(サラ)というインド人の少女が居るんです。消滅の魔女と呼ばれあらゆるものを一瞬で移動させたりその場から消し去ってしまう魔法を使うことができるんです。」
「ジャンヌやドルマーと同じ?」
「はい、そうです。でも…あの娘は違うんです。血を見るのが好きで何度も人を宙に浮かしては落として遊んだり、ナイフで皮を剥いだりとかなりヤバい娘で敵対しているんです!」
「…それは、確かに魔女と呼ばれても仕方がないとは思う。」
「わたくしは話に尾ひれがついただけだと思います。人は、今までのことができなくなったり、変化が訪れるとその変化を与えた人に対して陰口を叩くのが常です。心の狭さというよりは生物の本性のようで、赤ワインを飲んでいた部屋で服を血で濡らすようなものです。そして、人は自分が嫉妬していることに自ら気づくことができません。…っと、少し話過ぎてしまいましたね。カリム!」
「はい、何でしょうか?」
「明日の支度をするので移動しましょう。ソフィア、あとは頼みます。」
「はい、ヴィクトリア様。」
「北側にある7番壕に入られますか?」
「いえ、まだです。一度官邸に戻ります。」
「…わかりました。行きましょう、ソフィア。」
「はい、何でしょうか?」
「彼もお疲れようだからなるべく手短に、それと昇君。」
「はい。」
「君と君の部下の食事と宿の手配は済ませているので先に彼らを案内しておくよ。ソフィアちゃんの話は長いからね。」
「わかりました。」
「それでは、行きましょうかヴィクトリア様。」
「ええ、ではお二人ともまた明日。」
そういうと、カリムとヴィクトリアは部屋から出ていった。
「それじゃあ、とりあえず座って下さる。どこでもいいわよ。」
「ああ、わかった。」
「…なんでわざわざ反対側に座るのですか?私の隣が空いていますのに…。」
「いやっ、俺はここで…。」
「女性の誘いを無下にするとはいい度胸でございますわね。」
「ええ…ああ、それじゃ失礼して…。」
俺は、しぶしぶ彼女の右側に座った。
「…もしあなたが左側に座ろうとしていたらあなたの腹にナイフを突き刺すところでした。」
「ボディアーマー越しに?」
「それくらい貫通できますわ。そもそも、そのボディアーマーが防げるのは拳銃弾くらいですわ。」
「そうなんだ…てっきりライフル弾くらい防げるかと…。」
「それは、まだ先の話ですよ。まあ、魔術によって加工すれば別ですがでもそのうち解禁されますよ。」
「君とヴィクトリアさんの話は難しいというか、そもそも要領を得ていないんだけど…。」
「ええ、あくまで確認の為の会話ですからあなたがわからなくて当然の会話でしてよ。」
「はあ…ところで、無理して会話してない?」
「それは、ナポレオン様に何か危険があったのかもしれません。私は、英語で話しているわけですが変換はナポレオン様の能力に依存しているので…ごめんなさい、噓です!本当は物凄く話しづらいです!あっ、えっと…今日本語で話していますので…あああああ、違う日本語で話しても英語で話してもあなたには日本語で話しているのと変わらないんでした!確か特例が言語習得時で…。」
「あの…ソフィア?」
「すいません…もう大丈夫です。改めて、こんにちは…ふふっ、山の手言葉に変わっていあたとは…。」
「僕もいろいろと言葉を習ったけど聞こえ方が異なるの?」
「はい、実は違うんですよ。あなたは今英語で話しましたね。」
「日本語でいい?」
「ええ、ではお話します。この皆既月食作戦について。」
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