第67話 皆既月食作戦 Ⅰ 月面機動要塞Ark of the life

月面地下 機動要塞Ark of the life (生命の箱)


「Ark of the lifeCICより、各セクションへ連絡。これより、AICBM(エー・アイ・シー・ビーエム)の実験を行う。最終着弾地点は南極周辺海域及びJules Verne(ジュール・ヴェルヌ)の海。」

「全ての衛星の状態は問題なし、宇宙からの飛来物は確認できず。AICBMのシステム全て正常。」

「全ての大陸での高高度兵器の使用及び実験は行われていません。」

「投下コース最終確認。」

「確認。」

「システムコードT-1001。」

「シュミレーションICBMの発射まで5、4、3、2、1…0。」

「AICBM、識別コードAS-1作動を確認。シュミレーションT-1001より機体内での計算を確認、計算終了を確認。」

「了解。AS-1のリンクを確認中。機体計算結果での迎撃を最終確認。」

「対ICBMミサイルのレールランチャーからの離脱を確認、全16発それぞれの座標への移動を確認。」

「ミサイル移動中…。」

「核弾頭による破壊可能高度に到達、通常弾頭による効果範囲に落下中。」

「弾頭先端部に問題なし。」

「ミサイルNo(ナンバー).11(イレブン)に並走する人工衛星からの映像途絶。大気圏突入中。」

「自爆まで5、4、3、2、1…0!」

「予定高度にて全ミサイルの自爆をそれぞれ確認。現在、ミサイル部品の破片をモニタリング中。」

「CICより、各セクションへ。実験成功。衛星軌道艦隊空母でのAS-1の回収に移行する。」

「本日の当要塞への大型の隕石の衝突の可能性は低く、月周囲の物質は確認できず。第11管区への艦船の収容を予定通り行う。」

「第11管区からCICへ、無人衛星整備艇の出港が5分遅れている。」

「CICより、第11管区へ。コース変更を指示。」

「第11管区、了解。自動音声による通信を一次終了する。第11管区制御をマニュアルから中央管区への移行する。」

「CICより、第11管区へ。制御の移行を確認。全アンドロイドシステム及び機関システムに問題なし。皆既月食(偽りの太陽)作戦の障害となる軍事行動は見とめられず。」

「ムガル帝国周辺海域での艦艇の行動を確認。民間人が近海での漁を実施している模様。」

「ムガル帝国、現地時間午前5時。問題なし。」

「了解、引き続き監視を続ける。」

「機関部よりCIC、システム問題なし。自動音声システム及びメッセージの返信を要求する。」

「CICより、機関部。確認した。」

「機関部より、CIC。メッセージ及び音声システムの作動を確認。誤差既定値以内。」

「CICより、機関部。了解。」

「ムガル帝国旧政府軍、到達予想位置にて待機の模様。」

「ムガル帝国新政府軍北進及び西進。」

「CICより、各セクションへ。偽りの太陽作戦の実行を継続、『死海文書』によるシナリオにより長篠(ながしの)昇(のぼる)を神託通り、改死海文書の英雄とし計画を実行することを改めて認識する。」

「LLF主要施設全施設からの返答、「是」よりサポートシステム確認。」

「確認よし。」

「当世界への新たな生者の侵入は確認できず。」

「ムガル帝国及び周辺海域のモニターデータを表示。」

「機関部人員、情報を確認。」

「当要塞のエネルギーシステム問題なし。」

「システムコードT-1001でのミサイル破片全て地球への落下、着弾を確認。」

「地球軌道における衝突及び接近の可能性のある天体の動きは確認できず、引き続き監視を継続する。」

「居住区画のシステム、全て問題なし。収容可能です。」

「地球軌道の無人機動艦隊、正常に作動中。」

「アンドロイド制御システムも正常に作動。」

「スライムの核数、一致。」

「機関部人員は、魔法による長距離通信に備えろ。」

「人工知能システム、正常に作動。全無人兵器自爆システム正常に機能。」

「対無人兵器監視システム…作動中。非人工知能及び制御システムも正常。」

「AS-1、移動中。作業時間、遅れなし。」

「中央管区より、CIC。無人衛星整備艇最終遅れ300秒01。」

「CIC、了解。中央管区、機関部とのリンクを確認。」

「…Dolmaar(ドルマー)によると、彼の身体は正常に作動していると聞いているが、今回は大丈夫だろうか?」

「そのために、私達がここにいるのだろう…。」

「そうだな…。あともう少しだ…。」

「ああ…でも、これで本当に終わるのかが疑問だ。」

「終わらなければ今度は彼の友人を使うしかない…。」

「そうではないんだ、私は人の問題を心配しているのではない。」

「それじゃあ、何を心配しているんだ?」

「機械に繋がっている私とあなたやここに居る他の人には帰らなければならない世界がある。」

「そうだ、死んでから我々が元の世界で死後に行き着く場所ではなくここに来てしまった。…もう、この話は止めよう…長かったんだよ…本当に…。」

「それは、私だって同じよ。眠っているのとどちらが良かったのか…いえ、ちゃんと終わらせなければならないの…。」

「ああ、すまない…つい、いつものように弱気に…。何度も何十年も何百年も…創世記に疑問に思ったことだ。この世界の元々の所持者はこの世界で暮らし死んでいく為にこの世界を作った。かの王達は、この世界の神との契約によりこの世界の終焉を決め、私達は超常的な力、容姿、身体能力を持ち存在することとなった。しかし、この世界の神は我々が約束を守った後…彼を解放してくれるだろうか?」

「昇のことかい?元の所持者は死んだのだから…いやっ、待てよ。この世界が完全になる為には所持者の代わりとなる彼を連れて消滅すると考えているのか?」

「そうだ。」

「でも、それって既に結論づいているんじゃないの?」

「どちらにせよ、不完全な状態でどちらかの世界が壊れる。」

「そりゃあそうだけど…。結局、何が問題なんだ?」

「もしも、彼がこの世界に居たいという意思をこの世界の神が承認したら…だ。」

「そんなことはないさ…少なくとも俺はそう願ってる。」

「彼は生きているのに私達みたいにしたくはないわ。」

「ああ、そうだとも…。作戦後はしばらく休みだから大きなハンバーガー食べたり、絵を描いたり、ゲームや釣りでもしてまた自分と向き合うよ。」

「それがいい。」

「ゾンビにはそれがいいのかもね。」

「私達はゴーストだよ。」

「そうだった。」

「それじゃあ、やるべきことをやりましょう。死んでも仕事があるのはゾンビだけよ。」

「ああ、なんて悲しいゾンビなのだろう…。」


要塞では、メッセージと自動音声による言葉が飛びあっていた。


ここは、月の裏側にの地下にある機動要塞アーク・ライフ。

この要塞は分離可能なユニットで構成されおり、宇宙船のドックやVLSなどのミサイルシステムが存在し魔法により重力があるなど各種の実験施設が存在する。

この施設は、日仏露連合及びその他の人々のサポートを行うLives Liberation Forceの一つである。

そして、LLFで唯一地球上以外に存在する施設である。

また、LLFの施設の中で最後に作られた施設であり、また宇宙という人類の歴史の関係上創世記における人類への技術秘匿の為に大規模な実験の後は地球を監視する為の人工衛星の管理が主な仕事であり、その後も活動を続けていた。

フランスに出現した入間基地の存在も衛星により監視されており、その後の人々の動向も一人一人監視している。


「Sara(サラ)からの連絡、収容座標のデータを送信せよと。」

「機関部、計算データを送信。絶対座標にて収容する。」

「ソフィアを介しての通信記録を一部削除。」

「偽りの太陽作戦を行う。」

「了解、うまくやりなさい…サラ。」

「それは、こっちのセリフよ。ソフィア。」

「生命に解放あれ!」

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