第3話 民間人と職業軍人?いえ、自衛官!

超常現象から約一時間


「司令、基地機能は回復及び要員は全て確認できました。

しかし、確認できている民間人は一人、報道関係者のは許可した数と一致しました。」

「そうか、基地内の電力供給は予備電源に切り替えたのかね?」

「はい、一部区域で停電が続いています。

そして…外部との連絡は以前取れていません。

確認できたのは、離陸したF-15Jだけで交戦したそうです。

なお、詳細は不明です。」


彼女は、和元久代。

歳は35になる自衛官だ。


そして、彼女の上司でありこの基地での絶対的な権限を持っているこの男は、田中昌隆基地司令だ。

彼は今、窓の近くで外を先程から見つめている。


現在時刻 16時40分。


「それで、復旧のめどはついているのか?」

「いいえ、ついていません。

何にしろ初めての事態ですから。」

「自衛隊の災害対応力は世界一だそうだ。」

「どこの社説ですか?」

「さあ、家内がそう言っていたよ。」

「はあ…そうですか。」

「我々に残された時間は少ない。

基地の燃料備蓄はいいとして、問題は食糧だ。

三か月分の備蓄はあるが隊員のみならず栄養失調も懸念される。

そして、当然士気も低下する。

最悪事態だけは避けたいものだな…。」


そう、言うと田中は窓から目をそらした。


「そうですね…。」


和元はただうなづくだけだった。


「さて、説明責任は果たしておかなければならない…それにしても西川さんはどこに行ったのかな?」

「存じ上げません。」

「ああ、消えた彼らがどこに行ったのかが気掛かりだ。

なんせあの国の高官までも消えたのだからね。

ましてや、首相が消えたとなると国会の主戦派が開戦を宣言するかもしれない。

なんにしても、面倒な客人ではあったよ。」


……。


「はい、大丈夫です。特に異常は見当たりません。」

「そうですか…ありがとうございます。」

「ええ、お気を付けて。」

「はい…。」


長篠昇は、基地内の医務室にいた。


あの後、女性の自衛官に連れてこられて一通り検査を終え、その際持っていた保健証なども診察が終わると彼の手元に戻ってきた。


「お疲れ様でした。具合はどうですか?」


医務室を出ると、ここまで連れてきた自衛官がいた。


「…大丈夫です。」

「そうですか、少しお話できますか?」

「はい…あの…あなたは?」

「あっ、はい。中間美空と申します。以後、お見知りおきを!」


そう、美空さんはこちらに元気よく敬礼をしてきた。

テンションが高い人だなあっと、あいまいな顔をしてしまったが、とりあえず自己紹介をすることにしようっと、思った。

そして、声がでかい。


自衛官って、みんな肺活量がすごいことになっているのだろうか?

いや、そういえば広報の人も拡声器を使わないで声をかけていた人もいたような?


「長篠昇です。よろしくお願いします。」っと無難な自己紹介をした。


「はい、わかりました。立ち話も何なのでパブルーム、いえ、休憩室にでも!」

「あっ、はい…。」


ゲーム用語がそのまま…いや、元々はアメリカ軍の言葉だしな。

でも、そういった言葉は現実では初めて聞いた。


あとで、オレンジジュースでも、頼んでみようかな?。

いや、それじゃあ「「にわか」」まる出しだな…。

そう思いながら、所々明かりの消えている通路を進んで行く。

途中、都市迷彩をした自衛官二名に遭遇した。

美空さんは、敬礼をすると何かを彼らに耳打ちした。


そして、何事もなかったかのように軍靴をならし、持っている弾倉をカチャカチャ鳴らしながら、銃を手にかけたまま俺たちの来た道を歩いて行った。


しばらく歩くと開けた場所に着いた。

そこには、いくつかのグループが先に居た。

俺と同じように自衛官と何人かが固まっていて、お茶を飲んでいた。

俺は近くの席に座り、美空さんからお茶を貰った。

淹れたてのようで、少し熱かった。

そして、後からまた、人が来ると俺はその場を後にして案内されるまま会議室に着いた。

中には、すでに自衛官が配置についていた。

俺は、人がいる最後列で通路側の席に座った。

そして、人数を確認すると責任者と思われる男が会見を始めた。


前にいる報道員達は胸元から、スマートフォンやテープレコーダー、カメラを取り出してその様子を撮影しカメラクルーは回し始めた。


しかし、止められることは無かった。

そして、ものすごいフラッシュと、シャッター音が鳴り響いた。

おそらく写真撮影用の企業向けアプリケーションを入れているのだろう。

しかも、プログラムがインターネットを通じてサービス提供するのではなく、埋め込め式のタイプのもののようだ。


「ええ、お集りの皆様。私は当入間基地代表広報官の社颯真です。

これより、今、基地で起きていることの現状報告をいたします。

現在基地電力は、発電機によりまかなわれています。

そして、計算したところこの基地は約三か月以内に基地機能を失います。

食糧備蓄は長く見積もって5ヶ月弱となり、急を要する事態です。

現在外部との連絡は途絶えています。

また、基地を目視で確認したところ周辺施設が確認できず。

交通網も通信網全て途絶えています。

これよりこの基地は、周辺を探索、外部との連絡手段を模索します。

そのため、現在基地にいる各自衛官の総括を航空自衛隊が行うことになりました。」

「おい、おい!」

「一体、どういうことですか?」

「また、当基地を離陸した戦闘機は帰投次第事実確認をいたします。

現在、基地レーダーには機影及び地上機械を確認していません。

そして、GPSによる位置情報を得られないため小型無人航空機を基地の外に展開し情報収集にあたっています。」

「なんでGPSが使えないんですか?」

「……現在、調査中です。」

「なぜ、指揮権を統括したのですか?」

「本人達の了承を得ての臨時の措置です。」

「ここは一体、どこなんでしょうか?」

「現在、探索中です。」

「お手洗いはどこでしょうか?」

「ええ、君、その人を案内してあげて。」

「ここは異世界ですか?」

「…少しお待ちください。」

「あの…他に民間人はいますか?」

「確認できたのは、ここにいる人達だけです。」

「基地の欠員は?」

「いません。」

「永倉首相はどこへ行ったのでしょうか?」

「見つかっていません。」

「弱ったなあ…この後、特集を組むはずだったのに…ええっと…ここは圏外。

まづいなあ…テープで巻いてもらうしか…。」

「私たちは、この後どうなりますか?」

「はい、災害派遣用の物資が当基地にはありますのでテントを張る、あるいは基地施設での生活となります。こんな災害時でも自衛官は募集していますよ。」

「う~ん、夢を追いかけてここまで来たけど…安月給だからなあ…脱サラみたいなものだと思って入隊しようかな、それで、その後は小説を書いて…。」

「この後、ブルーインパルスの展示飛行は?」

「中止とさせて頂きます。」

「弱ったなあ、また特集ページを過去の没から選ばなきゃならない。」

「シビリアンコントロール(文民統制)を知っていますか?

これはいかなる場合でも法の下に議会での承認を得なければ自衛隊は動くことができません。

それを知っていてのことですか?」

「はい、その通りです。」

「それならば、救援物資の無断使用になるのではないでしょうか?」

「はあ、ごもっともです。」

「でしたら…。

…ええ、わかっていますよ。

自分の首を締めていることは。」

「ええ、これにて説明会は一時終了いたします。

また、これより基地外縁部の調査に同行を申し出たい方がいましたら、挙手を…。」


周りの大人が手を挙げる中、俺は手をあげなかった。

なんせ、もう疲れてしまったというのもあるが、状況がまったく飲み込めなかったので休みたかったからだ。


「それでは、同行をする方はご起立ください。」


そうして、この日は終わった。


俺は、空いている航空学生の部屋を使わせて貰うことになった。

ありがたいことに、部屋は綺麗に整っていた。

夕食は、昼間売っていたカレーを食べて、口をゆすいで寝た。

不思議とこの日は、早く寝ることができた。

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