第18話 パーティ結成
白百合の迷宮で僕たちの力が通用することがわかった。
でーもー、効率がわーるーいー!
そんな愚痴を言いながら街に戻り、顔なじみにった門番のジェイデンさんに挨拶をした。
「あれ、どうしたの帰り早くない?」
「はい、初ダンジョンに挑んだんですけど、3人じゃキツくてどうしようかと……」
「3人? せめて5人か6人になるようギルドの募集で集めてからじゃないと無理っしょ!」
ギルドでやってくれるの? 初耳だよ。
「モチ、マッチングシステムだったかな。
募集人数とか条件いえば近いレベルとかで探してくれるはずさ」
「そんなのがあったんですね、ありがとう、ジェイデンさん」
「お、おう、いいって、いいって……」
昼過ぎなのにギルドは混雑していた。
「モニカさんこんにちは。
今日はパーティメンバーの募集をかけたくてきたんですが、
マッチングシステムって利用できますか?」
「ええ、可能よ。この用紙に希望事項を書いて頂戴ね」
受付期間は5日ごとに区切ってある。
その期間ごとのマッチングとなるので、申し込んで直ぐとはいかない。
「因みに忠告だけど、君たち人気だから募集の事とか、おおっぴらに言うの気をつけたほうがいいわよ」
真剣にパーティ募集を考えている人も多い。
しかし、中には新人を食い物にしようとか悪意のある人がいるから慎重にと教えてもらった。
決まるまでは迷宮攻略はお預けなので、2人にも薬草取りのお手伝いをお願いした。
これで今年の薬草採集シーズンは終わる。
しっかり貯めて頑張るぞー!
8日後、ギルドからマッチングの知らせを受け会う事となった。
向こうも3人組、会って早々自己紹介をしお互いのことを確認し合った。
ヒュームの女性魔導師のナオミさんは阻害魔法が、
得意で攻撃魔法にも自信があるそうだ。
そしてノームの男性、名前はドンクさん。
探索や罠解除が得意でボウガンでの遠距離攻撃を心がけているそうだ。
次にドンクさんと同郷でドワーフの女の子、ミーシャさんだ。
盾と短槍で接近戦をこなす。
少し奥手のようだが最大の売りはスキルのマッピングなんだって!
すでに1階の15%ほどは終わっているらしい。
3人とも少し年上で白百合の迷宮の攻略を少し前に始めたそうだ。
こちらも一通りのスキルや目指している事の話をした。
「ジョブは忍者ってあるけども、〝忍ばない忍び〞を目指しています」
「ユウマ、まず忍者のことを説明しないと、誰もわかんないぞ」
「あはは。まぁ、ある程度お互いの事わかったし、試しにダンジョンで一戦してみない?」
ナオミさんの提案で僕達は白百合の迷宮へと向かった。
流れとしては、羊2芋虫1の場合、まずナオミさんによる阻害魔法を合図に前衛が前に出る。
組み合わせは僕とナオミさんが羊を1体、
ベルトランとドンクさんでもう1体、
芋虫をミーシャさんとポーで相手をする。
さあ、始まるよ!
気分も上がってきて気合十分だよ!
阻害魔法で動きの遅くなった羊にすれ違いざま脳天に1発入れた。
そして、ふらついているところを横から突き刺し頭を破壊する。
この間、ベルトランとドンク組はベルトランが突進をいなして時間稼ぎ!
その体勢を崩した羊にドンクさんが矢を放ち、さらに足止めをしている。
その横ではミーシャさんも上手に盾を使いなんとか防いでいる。
でも盾術はベルトランより少し劣っていて、ポーのフォローが効いている。
ベルトランの方は放っておいてもよさそうなので、次に僕は芋虫の方を相手にする。
芋虫は羊と違い、打、刺、斬すべて有効。
だから、思いっきり突き刺しそのまま横に振り傷口を広げる。
これが有効打となり沈んでくれたので、全員で残りの羊を取り囲んだ。
さすがベルトラン、危な気なく対応している。
しかし決め手がなく敵もまだまだ元気だ。
こちらに気付いたベルトランは、シールドバッシュを入れて体勢を崩してくれた。
あとはさっきと一緒、頭を突き刺し終わりとなった!
ふ~! 6人だと断然早い!二、三分てところかな。
初めて組んだ3人だけどやりやすいよ。
「ちょっとなにこれ!」
ナオミさんがワナワナしている。
さっきの戦い方ダメだったのかな。
「ああ、信じられんな! 激早じゃん。
ベルトランさんいつもこんな感じなのか?」
ドンクさんも興奮して捲し立ててくる。
「いやいや、さすがに3人だと遅いしキツイから募集かけたんだぜ。
まっ、6人でこれぐらいの速さなら及第点じゃないか?」
「はぁ? 及第点?
そんな事言うのあなたたちぐらいよ!
いい? 普通はね、もっと羊の突進に腰がひけちゃってなかなか崩せないの。
芋虫だってそう。
あの粘着糸に四苦八苦するものなのよ!
だからみんな慎重にならざる得ないのよ。
一回の戦闘時間なんて15分はかかるわね。
で、今の何? 3分? 有り得ないわよ」
15分てそんな長い時間戦ったら、バテて動けなくなっちゃうよ。
「そうよ。だからみんな、戦い終わったら30分から1時間は休むの。常識よ」
え~、なにそれ?
すぐ次行かないと効率悪いのにー。
「ははっ効率が……か…………は~ぁあ~ぁ」
余裕のある僕らは、少し休んだあと次の敵を5分ぐらいで見つけ同じようにやっつける。
その次も同じ感じ、1時間で4回戦った。
みんなそれほど疲れていないんだけど、お試しパーティーなので、
無理はせず街に帰ることで合意した。
街に帰ってからは、親睦を深めるため夕食を一緒にと誘った。
お店は向こうがいつも行くなじみの酒場。
ご飯も美味しいので有名なところだ、ついてるよ。
席に着くと早速乾杯をして食事会が始まり、今日のお互いの思ったところ言い合った。
「ユウマさん、強いね。
動きも速くて一撃で羊を倒すなんてすごいわよ」
「いえ、やっぱりナオミさんのデバフか聞いているんですよ。
普通だったらあんなにキレイに入らないし」
「ふふ、ありがとう。
でも開戦後の動きみんな良かったと思うわ。
特にポーさん、後衛なのにメイスを振り回して勇敢に戦うしヒールのタイミングも上手よね」
「いえ、前に出るなと2人にも注意されていて、どうしようと悩んでます。
そう、ヒールといえばミーシャさんの被弾が少ないので、MP節約できてありがたいです」
「ありがとう…………ベルトランさんうまいし……かなわないよ……」
「いや、俺なんかまだまだだよ。
みんなを守るには力不足さ。
ドンクさんのフォローがなかったら、危ない所があったしよ」
「お、分かってくれるなんて嬉しいねぇー。
いい目してるよ」
お互いに意識をしているせいか、距離感も丁度いいし、
戦いだけじゃなく話していても疲れない。
相性がいいのかも、もしパーティーを組んでもうまくやっていけそうな人達だ。
お酒も進み、今日の稼ぎの話にもなった。
他のパーティだとさっきの話の通り1時間に1回戦い、
1日通してだと5~6回がいいところらしい。
初心者だと1人当たりの稼ぎは1日銀貨20枚がいいところだって。
1時間の戦闘であったのでそこまではいかないが、
それに近い金額を稼いいたのだから向こう3人のテンションは上がっている。
「マジあのペースでやったら、凄いことになぜ。
MP回復もあるから休みを入れるとしても、他より倍はいけるぜ、まったくよー」
「それに戦闘時間が短いってことは、それだけリスクも少ないから安心ね」
なんでも、今回メンバー募集をかけたきっかけがメンバーの欠員だそうだ。
初めは6人パーティでやっていたけど、盾持ちの3人がいなくなった。
前の戦いで、羊に戸惑っている隙に芋虫の糸に捕まり2人が突き殺され、
なんとか逃げたが残りの1人もそれを機に引退をしてしまった。
今回の募集は、回復メンバー必須条件でかけたそうだ。
時間も経ち、ドンクさん嬉しいのか飲むペース早すぎる。
「いや~、俺っち正直いうと、ゴブリン討伐の若いのがいるって聞いてさ、ちょっと構えていたんだよ。
ありえないっしょ?
Lv1で100匹って。どんな強面なやつだろうって!
言うこともぶっ飛んでてすげーだろうなって。
でも会ってみたらいい奴らじゃん。
嬉しいよ、それにさ、女性の珍しい冒険者稼業でさ、
もしパーティが一緒になるって事になったら、
女性3人のパーティって他からやっかみを受けそうだな」
「………………」
「ん? 何……?」
「あの、ごめんなさい。僕、男です」
「「「ブ――――――――――ッ」」」
お、久しぶりのリアクション!
「「「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」」」
いいですよ。それに誤解解けてよかったですよ。ね?
「そうそう、ユウマもそう思われて接しられたら困っていただろうし、今わかってよかったよ、ね?」
「本当にごめんなさい。
バッカドンク。これで話流れたら許さないからね」
いや、他の2人もじゃん!
僕はいいが、向こうが気まずい雰囲気で食事会は終わってしまった。
次の日もう一度、迷宮で確認のための戦闘を行い、
その後各グループに分かれ話し合いをした上で決めることにした。
「ユウマさん、昨日はごめんな、失言だった」
「だから、いいですよドンクさん。
気にされるとこっちが気になりますので、終わりにしましょう」
「君は本当にいいヤツだな」
そんな話をした後、確かめの最後の戦いを終え話し合った。
僕たちは勿論3人の能力、人柄、スキルを考慮しパーティーを希望することにした。
そして……。
「ありがとう、あれでダメってことになったらって~思っていたらさ~」
「ごめんね、ユウマさん。
こいつが手を出さないよう私たちが見張るから安心してね」
「俺っち、そんな事しないぜー!」
パーティメンバーとしてだけでなく、一気に兄と姉の3人が増えた感じで嬉しい。
因みに、互いの呼び方はメンバー同士なので呼び捨てにすることと決めた。
……できるかな。
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