第2話 現役JC美少女あいなちゃん

 素直に思ったことを口に出す。

 間違えなく失言だった。

 その後沈黙が訪れる。

 そして遅れるように日下部が俺の首に手を回す。


「こ、この! 失礼なやつめ! どこからどう見ても可憐な女だろうが!」


 がさつな所は一つも変わっていない。

 変わった所と言ったら体格だろう。


 昔も首に手を回され、しめられた覚えがある。

 だが背中に当っている幸せの弾力は見に覚えがない。

 昔は拷問だったが、今はご褒美だ。


「たんまたんま。俺が悪かった。もう離してくれ」


「ふんっ。分かればいいんだ」


 幸せな弾力から開放される。

 少し名残惜しい。


 しかしもう一度よく見てみると本当に綺麗になった。

 元から美形ではあったが、やはり成長した姿は一段と美しい。


「約十年ぶりの再開だ。店によって少し話さないか?」


「……話したいのはやまやまなんだけどさ、俺行かなきゃいけない所あるんだ。じゃあ――」


 立ち上がり、歩き出そうとした瞬間、めまいがし、倒れる。

 それを何度も繰り返す。

 どうやら相当殴られたダメージが大きかったようだ。


「ほらほら、そんなんじゃ帰れないぞ。腕貸してやるから」


「お、おい……」


 路地裏から出た俺は、日下部に引っ張られ、強引に腕を組まされる。


 がさつな所はやはり変わっていない。

 変わったとするなら柔らかさ。

 なんというか、ムチムチボディーと言うのだろうか。

 最高で、周りの視線が痛い。


 しかし、仕方のない事だ。

 俺は怪我をしてまともに歩けない。

 これじゃ買い出しもおろか、帰宅も出来ない。

 なら優しい日下部に任せるか――。


「ほら、いっくぞ〜!!」


 怪我をしているというのに、強引に引っ張る日下部。

 怪我人を扱う心得が全くない。

 けどこれが最低限の優しさなのだろう。

 痛いがしかし、柔らかく最高だった。


 夕飯の買い出しを済ませて、帰宅する。

 今日は一週間分の食料を買う日だったが、怪我をしている為諦めた。

 日下部も居たが、女の子に大荷物を持たせるのは気が引ける。


 家の前に到着する。

 食材の半分以上を日下部に持たせてしまった事が男として恥ずかしい。


「悪いな。ここまでしてもらって。もう一人でも歩けるからここまででいいぞ」


「は? 何言ってるんだ?」


「いや、だからもう帰っていいって」


「全く分かってないな北馬は。ここまで連れてきたら、料理を振る舞うのが常識でしょ?」


 ウインクさせ、許可なく家に入ろうとする。

 それに俺は焦っていた。

 凄く焦っていたんだ。

 そのせいで転び、卵が割れた音がし、そして日下部に秘密の扉を開けられた。


「お帰りなさいませ、北馬くん。お背中流しする? ゲームにする? それとも、現役JC美少女の、あ・い・な・ちゃ・ん?」


 膝を床に付け、正座で出迎える少女。

 下着を着けているが、それはまさしく裸エプロン。


 日下部は固まり、持っていた食材がスルリと手から落ちる。

 そして第二の卵が割れた音がした。

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