復讐者A

透真もぐら

プロローグ




馬面の男、それが彼を見た時の第一印象だった。







「レイジー、行こう。」


「………うん。」


三つ、均等に並べられた墓の前に四人の男女がいた。


一番前方で、墓の前で手を合わせていた黒と金の混ざった髪を持つ少女レイジーに、くすんだ金髪をした荒々しい目をした男が声をかけた。


レイジーは力なく立ち上がり、墓に背を向けた。

四人の男女は墓場から出ようと歩き出す。


「…あいつがいなくなって、もう8ヶ月か。」


「………そうだな。」


「……………」


黒髪の痩せぎすの男が誰にともなくそう言う。もう一人の少女、紅玉のような瞳をもつ少女はただ彼ら3人を見ていた。


「急ごう、もう夜が来る」


「待って。」


黒髪の男にレイジーが遮るように言った。一体なんだと振り返る3人を背にして、レイジーは墓のもとへ走り出す。


そして、真ん中に建てられた墓の前で膝をつき、そっと撫でた。


「待ってて、絶対に私があなたを見つけるから。」


そう言うとレイジーは左右の墓も同じように撫で、3人に追いつかんと走り出した。






アンドレという男がいる。

俺の友の一人であり、レイジーの幼馴染であり、彼女の想い人であった。そして今はもういない。


どこで何をしているのかわからない。彼は行方不明なのだ。実はもう死んでいるのかもしれない。いやきっともう死んでいるのだろう。



彼は忽然と姿を消した。



ただ、彼が身につけていたバンダナがボロ雑巾のように捨て置かれていたのだ。それを見て、レイジーは泣いていた。


アンドレとレイジーには、もう二人幼馴染がいた。そしてその二人はバンダナのすぐ近くで死んでいた。


アンドレはもう死んでいるのだろうと、誰もがそう思う悲惨な現場だった。


彼の身元に何があったのか、俺たちは知らない。



これはアンドレという男が復讐者と呼ばれるまでの経緯を著す物語である。


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