甦りし伝説、壊します。 〜そして私達は結婚する〜

月宮 凜

プロローグ

取引を終えた行商人が馬車を引いて村へ向かうため、森の小道を走っている時、大きな影が馬車の上を横切った。

何の影か不思議に思った商人は空を見上げる。すると、上にドラゴンが飛んでいた。

商人は急いで馬車を走らせたが、ドラゴンは息を吸い込み、炎のブレスを吐き出す。

後ろから焼き焦げた植物の匂いがする。このままではドラゴンの炎に焼かれて馬車ごと私は死んでしまう。

必死で馬車を走らせながら逃げていると、後ろでドスンと何か大きいものが落ちる音が聞こえた。

恐る恐る後ろを振り向くと、そこには2人の少女と、先程まで空を飛んでいたドラゴンがいた。

紫色の長い髪の少女と緑の短髪のエルフの少女の二人組。

商人は少し離れたところまで馬車を避難させると、こっそりと彼女達の様子を伺い始める。


「はぁ、やっと追いついたー」

「案外遠くまで逃げられてしまっていたわね」

「でも、ちょっと周りに被害が出てるね、どうする?リアンちゃん」

「後で元どおりにするから大丈夫よ。早く終わらせて帰りましょう、ローラちゃんと私の愛の巣へ」

「いや、そんなもの建てた覚えは無いんだけど」


紫の子が、ローラで緑の子がリアンか。

どこかで聞いたことがあるような・・・

商人が思い出そうとしてる間も二人はドラゴンをよそ目に会話を続けていた。

いきなり地面に落とされたドラゴンも初めは混乱していたものの、状況を理解し始めると、再び息を吸い込み炎を吐き出す。

地面生えている草花も燃え、辺り一面に炎が広がる。

森に住んでいた動物達は逃げ出し、辺りには数匹の魔物しかいなくなっていた。

その後、ドラゴンは再び空中に飛びブレスを吐こうとしたが、空に飛び立とうとした瞬間、頭と胴体が分かれ、ドラゴンはそのままドスンと大きな音を立てて地面に落ちる。

そのドラゴンの首を落としたのは先程ローラと呼ばれていた少女。

彼女はドラゴンの死体の元へ行き、首を持つとうっとりとした表情でドラゴンの首を眺める。

周りにいた魔物もいつの間にか倒れており、そのどれもが首だけが無い状態で倒れている。

少女が剣を抜いた様子は全く見えず、気がついた時にはドラゴンも魔物も切り尽くされていた。

もう一人のリアンという子は魔法を唱え始めたかと思えば、燃え尽き、枯れ果ててしまった森の草木を再生し始める。

さっきまで炎で燃え続け、焼け野原と化し辺りには何も残っていなかったはずなのに、気が付けば緑が生い茂る自然豊かな森に戻っている。

逃げて行った動物達も戻って来ており、まるでここにドラゴンが来てないと言えるような状況だ。

ドラゴンを一瞬で倒し、周りの魔物さえも葬る少女。そして焼け野原と化した森を再生する少女。

そうだ、思い出した!以前、どこかの村で聞かされたことがある。

人間とエルフの少女二人組のパーティがいると。そして、そのパーティは凄まじい強さとスピードで異例の速さで最高ランクに到達した冒険者二人組。

それがあの子達だったのか。だが、この話をしたところで誰も信じてはくれないだろう。ドラゴンを一瞬で倒し、焼け焦げた森を再生させるだなんて。

嘘と捉えられても仕方ないだろう、それ程あの二人が規格外なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る