漫才『練習』
さかなへんにかみ
漫才『練習』
A:まあ漫才ですけれども、お笑い芸人さんの漫才見てるとさ、芸人さんてすごい練習するじゃん
B:やっぱプロだからね、稽古たくさんやるよね
A:ああ、漫才の練習じゃなくて、漫才の中で何かの練習をするじゃん。今度居酒屋さんでバイトするからとか、デートするから、とか言ってさ、練習をしてますよね!(客に向かって)
B:形としてはそう。そんな強く言うことではないけどね
A:俺も練習がしたーい
B:練習したいそうです。何か練習したいことあるの?
A:それがね、ない(腕をまくる)
B:ないかー(しっぺをする)。
A:(袖を戻して)生きててさ、そんな練習したいことある?練習なんてしないのが一番じゃないですか!(客にむかって)
B:手段と目的が逆転しちゃってる
A:どういうこと?
B:いや何かになりたいとかできるようになりたいから練習するわけで、練習したいから練習することを探すわけじゃないじゃん
A:はーなるほどね。守りたい人がいるから生きてるのであって、生きたいから生きてるわけじゃないていうことか。
B:かっこいいし、正解してるね
A:そっか、ならなりたい目標があればいいわけか。
B:なんかある?
A:あ、一個あった。昔から憧れてたやつ
B:いいじゃんいいじゃん。なに?
A:鬼だ
B:はい?
A:物心ついたころから鬼になりたかったわ
B:あー、そう。へぇー、そっち?へー、ごめんあんまりそういう印象がなかったから。あ、そう。理由って聞いて大丈夫なやつ?
A:いやかっこいいじゃん。鬼って
B:角とかあって、強そうみたいな?
A:それもそうなんだけど、鬼って女子供を襲うじゃん
B:うん
A:そこ
B:なるほど。それあんまり言わない方がいいかも。
A:時代的に?
B:分かってんじゃん
A:OK。(両手で頬を叩く)金棒が似合うところが好き
B:…似合ってるね。一番似合うんじゃないかな、陸上だと。
A:じゃあ、水中だと?
B:タカアシガニじゃない?
A:たし蟹(腕をまくる)
B:あ、蟹だけに?
A:蟹だけに
B:(Aをしっぺする)そろそろ練習しないと
A:そうだな。じゃあ俺赤鬼やるから、お前青鬼やって
B:え俺も鬼サイド?それだと人間いないけど大丈夫?
A:大丈夫なやつだから
B:あ、そう。じゃあ俺青鬼ね
A:(自動ドア)ウィン。お、青鬼じゃん。今日冷えるね(腕をさする)
B:どこー、ここどこなんだよ
A:いや洞窟だよ
B:洞窟に自動ドアないだろ。
A:いやあるだろ。気候考えろって。
B:気候?
A:12月に洞窟ドアなしは寒いだろ
B:そうだけど。自動ドアじゃなくていいだろ。オートロックにしろよ。
A:そうするよ!
B:じゃあいいけど。おお、赤鬼か。どうしたの
A:これ見てみ?(手を掲げる)
B:え、どうしたの。この金銀財宝
A:村襲ってきた
B:あ、思ったより悪い
A:そういや帰る途中でさ、変わった船を見てさ。何か人間の男と、犬と猿と雉が乗ってたんだよね
B:お前、それさ鬼として一番やばい船だよ
A:いや何でよ。何か楽しそうだったよ。(インターホンの音に気づく)あれ、誰か来たかな。ちょっと見てくる(舞台から一度出る)
B:おい、気をつけろよ。
A:(Aの声だけ聞こえる)あ、さっきの船の人!珍しいすね。え?ぎゃあ!
B:あー死んでる。あいつ、悪いくせによえ〜
A:(戻ってくる)よく考えたら鬼ってだいたい退治されるから、桃太郎側やるわ
B:また今度ね、どうもありがとうございました
漫才『練習』 さかなへんにかみ @sakanahen
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