ふつうのかみさま

鴨荷モカ

プロローグ

「あと何回会えるんだろう」

 駅までの帰り道に長谷川新はそう言っていた。あまり、らしくはなかった。

「顔合わせるだけなら300回くらい?」

 倫は答えた。本当のことは誰も知らない。

「デートは?」

「デートは100回?」

「適当に答えてんなあ」

「だって」

 その先に続く言葉はない。長谷川は自分が始めた会話を後悔するような顔をして、それからしばらくは、二人で黙って歩いていた。

 倫は余計なことしか考えないようにしていたのかもしれない。必要のない『もしも』をいくつもこねくりまわして、もうとっくに疲れてしまっていた。

 神様がいれば、と思った自分がらしくなさすぎていやになった。

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