無実の罪で国外追放されたので、復讐してもいいですか?

SORA

第1話

「ドリゴス、お前は裏で魔物と取引をしていたそうだな。よって国外追放する」


謁見の間にカメリア国の王太子であるブリード殿下の怒鳴り声が響き渡った。


今までお父様に仕えていた弟子たちですら目を合わそうともせずに、弁明するような素振りすら見せなかった。彼らはきっとお父様が犯人ではないことを知っているはずなのに……


お父様は無実を訴えたが、棄却され、私達親子は国外追放されることになり、私は悔しくてたまらなかった。


「どうしてお父様があのようなわけのわからない理由で国外追放されるのですか!! 今までこの国が安泰だったのは、お父様が魔物が侵入できないよう結界を毎日毎日時間をかけて、張り直していたからなのに……誰なのよ。こんなデマ流した奴。まぁいいわ。この国はもう終わりね。父様の結界がなければ、すぐに滅んでしまうもの」


「そんなにカッカするなよ。かわいい顔が台無しだよ」


優しい笑みを浮かべて、私の眉間を指でなぞりながらナリーナの怒りを鎮める。


なぜか私がこのように怒るとすぐさま、お父様は私の中に芽生える熱い燃え上がるような感情を抑え込むためなのだろうか。優しく包み込むようにゆっくりと話し始め、冗談を交えながら見えない何かから守るように自然と私の体に結界を張るのだ。


昔から不思議に思いながらも、心地良い温かさに体もポカポカして自然と怒りが静まっていくのがわかるので、いつの間にか身を預けるようになっていた。


いつものように平常心が戻ったところで、お父様に声を掛ける。


「さぁ、お父様、早く行きましょう」

「そうだな。陛下が守って下さると思っていたが……残念だよ。それにお前もブリード殿下との婚約が白紙に……」

「いいんですのよ。お父様。所詮は、昔の約束でしたし……それに正直、今のブリード殿下は昔のように輝いておりませんから」

「そうか。すまない」


謝罪の言葉を口する父は、いきなり老けたかのように体も小さく見えた。私はお父様を少しでも元気づけるために話題を振った。


「それより、これからは私が魔法使いとして活躍するからお父様は当分休んでていいわよ。隣国は、魔物もいないんでしょ! 結界師のお父様より私の方が職があると思うの」

「そうだな。だが、あの魔法は使うんじゃないぞ……」

「えっ? わかってるって!心配しないで」


※※※


 私達は、隣国のペルス国に着いた。さすがは、多民族国家のペルス国である。裸同然で歩く人、逆に肌を全く見せないように顔まで隠している人、普通の服を着る人、私達のようにローブを着る人、甲冑を着た人、様々な民族衣装を着た肌や髪色も違う人達が町中を歩いている。


ナリーナは興奮してしまう。


「お父様、この国素敵だわ」

「そうだな。ここはいつ来ても幸せそうだな」


お父様は、嬉しそうだが、やはり元気がなかった。母国のカメリアが心配なのだろう。国に忠実を捧げた人だったから余計にショックも大きかったに違いない。そんな人を追放するなんて、本当にあの国はどうかしてる。


私は内心イライラして歩いていたため、誰かとぶつかってしまった。


「痛っ」

「あっ、すみません」

「ちゃんと前見て歩きなさい」

「はい。すみませんでした」

「ちょっと待ちなさい。君は……?」

「はい?」


漆黒の髪色の男性が私の目を見つめている。私もつられて見つめ返していたが、途中でその理由に気付き慌てて、目をそらした。そして、お父様の腕を掴み、路地裏まで一気に走った。


(ここまで来たら大丈夫かもしれない)


私は視覚魔法の呪文を唱えることにした。


「ルリナラナ」


2人の体は光に包まれると手、足、体と少しずつ消えていく。全部が消えたところで周囲からはこれで見えることはないだろう。


私は安心して、街を歩くことができると思い、路地裏から出ようと考えていた。

お父様も何かを察していたのかずっと黙っていた。


私は、念のためお父様に説明しておくことにした。


「すみません、お父様。さっきの男性、魔法使いでした。それも高位の。見つめられてしまい、私の記憶を透しされてしまったの。途中で気付いたからどこまで読み取られたかはわからないけど……」

「そうかぁ……それは心配だな。最近の記憶だけなら問題ないのだが……」


私が頷こうとしたそのとき、どこからか下品な笑い声が聞こえてきた。

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