第6話 ただの王女
救世の乙女として、地位を上げていった王女は、様々な場所で活躍しました。
王女の頑張りのかいもあり、世界各地で人々を困らせていた魔物達は、徐々に減っていきました。
もはや、王女の事を知らない人間など存在しません。
誰もが王女を称え、敬いました。
「王女様、今日も一緒にお話ししましょう」
「違うわよ王女様は、私とお話するって約束したでしょう」
友達もできましたし、
「王女様、今日君を護衛するのは私だ。いつも通りよろしく。おっと、そのドレスは昨日と違うように見える。今日も綺麗だね」
恋の相手もできました。
王女の日常は忙しくなりましたが、かつてとは比べ物にならないほど、幸福に満ち溢れていました。
やがて、各地で暴れていた魔物の被害がおさまり、救世の乙女の力が必要ないほど治安が回復していきました。
そうなればもう、救世の乙女は必要とされません。
そう考えた王族達は、再び王女を虐めようとしますが。
「お前達の非道な行いは、すでに国民に知れている。今までは国が非常事態だったから、見逃していたが、もうそうはいかないぞ!」
大勢の騎士達に囲まれて牢屋送りになってしまいました。
「救世の乙女は確かに必要なくなっただろう。しかしそれは、救世の乙女は、だ。ただの王女様を必要としている人達はたくさんいる」
「そんなの嘘よ! あんな役立たずの妹を必要とする人間がいるわけないわ!」
「そうだ。何かの間違いだ!」
「黙れ! 愚かしい王女に王子達よ! 間違いであるものか!」
国の人々は王女様の優しを分かっていました。
騎士達も、一生懸命人々を守ろうとしていた王女様の頑張りを見ていました。
だからこそ、救世の乙女でなくなった今は、他の誰でもないただの王女様自身を必要としていたのです。
「我等にお前達のような王は必要ない、牢獄に入って反省するがいい」
その日、投獄されなかった唯一の王族……不出来だった王女は、一国の王になりました。
優しい王女様がおさめる国は、多くの人達に助けられながら、そして心強い騎士に支えられながら、それからおだやかな生活をおくっていきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます