ふしぎな家

 家族四人で暮らす家があった。家族構成は、夫婦と中学生の娘がふたり。


 その家族にとっては普通の朝。四人はそれぞれ準備をして、順に家を出て行った。

「いけない」

 最後に玄関のドアを閉めた父親が、ひとりつぶやくと家の中へ戻って行った。

 そして、手際よく、明かりの消えている部屋の電気をつけて回り、「これでいい」とひとつ頷いてから、玄関のカギをかけ、小走りで家をあとにした。


 夜。その家は暗闇の中で輝いていた。

 いちばん最初に帰って来た母親は、玄関のドアを開けると、まず、家中の明かりを消して回り、最後にキッチンの電気を消した。

「さあ、夕食を急いでつくらないと」

 闇の中から、母親の声がした。

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