失踪宣告

 郷土史家として、地元に伝わる怪談・奇談を収集していた祖父が姿を消した。

 行方不明から七年が過ぎたので、手続きを行い、法律上、祖父は死亡したことになった。


 失踪したのと同じ日付の夕暮れどきに、彼が建てた墓の掃除へ出かけた。

 中がからっぽの墓を磨き終え、洗い場で片づけをしていると、黒い人影の集団が、ぞろぞろと列をつくって、祖父の墓に近づいているのが目に入った。


 人影たちが順番に祖父の墓へ手を合せ、墓場から出て行く中、最後のひとりが拝みはじめたのだが、その場を去らずに留まりつづけていた。

 恐るおそる近づいて正体を確かめてみると、それは祖父であった。

 事情を尋ねたが、祖父には失踪中の記憶がなかった。

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