第4話 中華人民共和国

 ネットやテレビを見る限り、やはりステータス画面の情報源やその元動力に大人達は関心を持っているように感じた。

「電波や重力波じゃないこのステータス画面は何なのか? 『解らないことは魔法です』てのは、やっぱ現代人は納得しないんだろうなあ~」

「そりゃ『神話』より『科学』が発展したこの現代社会じゃなぁ~、なのじゃ」

 などと、ダラリとくつろいでいた。

 改めてこの現代社会に息苦しさと面白さを若干感じる桃花。実十が持ってきてくれたお茶に舌鼓を打ちつつ、コップを片手に、――ソレは来た。


 ピピピピピ――ッ!


 スマホから、電話音が鳴り響く。日本国現首相、今泉善次郎いまいずみぜんじろうだ。桃花は別の一件で知り合い関係になっていたので「ああ、あの人か」と知り合いに話しかけようとスマホを取ろうとするが……。

「待て桃花」

 雛夏がその動作を止める。

「桃花は世界線を移動させたから、それ相応に未来が変動してるはずじゃ。ここは慎重に会話しろよな」

「……フレンドリーに会話するなって事ね……おっけい」

 というわけで、スマホの通信をオンにした。


『はい、湘南桃花です』

『初めまして、私は日本国首相、今泉善次郎だ』 

『……初めまして総理。知ってます、テレビでよく観てますので』

『……ほう、あまり驚かないのだね』

『お陰様で、こちらも色々修羅場を潜っていますので。電話は他の人も聞いているんですか?』

『ああ、うちの役員全員が聞いているよ。それで、単刀直入に言うが。国会に来てくれるかね? 出来れば今すぐ』

『……、非公開なら良いですよ。私、ライブでの演説とか苦手なので』

『了解した、ではこれにて』


 プツン――。

 という所で、電話は切れた。

「……、ふむ。私の事覚えていないっぽい」

「そんな事だろうと思ったのじゃ」

 桃花、実十、雛夏の間で少しの静寂が訪れる。

「江ノ島駅から東京駅……。こっからだと1時間30分って所か、さあ行くよ。実十みと雛夏ひな。ごめんね実十くん、キミのことで頭が回らなくて……。今の現状を何とかしたいことで精一杯なの」

「何言ってんだか、……ってああ。やっぱついて行く感じですか」

「じゃろうなぁ~、んじゃ。出発じゃ~」



 西暦2020年7月14日15時30分。

 日本国、東京、総理執務室。


「で、何から話せばいいんですかねえ?」

「何でもいい、あの門が何かわかるか? ……と、言いたい所なのだが。その前に。まず先に、中国から連絡があった。ぜひ桃花君達3人と、【会って話がしたい】ということを言われた、と先に通達しておく」

 桃花と雛夏は察することが出来たが、実十はまた置いてきぼりになりそうで。ついていくのに必死である。

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく? なんで?」

 実十は軽はずみなことを口走った。

「アレのことかな?」

「アレのことじゃろうな」

 アレ、というのは『吸血鬼大戦』の時代の事だ。何せこちら側……便宜上〈桃花側〉と言うが。〈中国側〉はおそらく解っている。その他諸々の色々な齟齬をすり合わせたい考えなのだろう。

 『デート戦争』より前の時代の始まりの物語、その歴史をどのように築くかは。正直どちらも手探りなのだ。

「信じて良いのかな?」

「というか一回ぐらい会って話すべきだろう、マジで」

 今のこのご時世、アメリカ(日本)勢力VS中国勢力。のような縮図になっているので、そのあたりをどのように調整すれば良いのか解らずじまいでいる。

 ――だから信用に欠けるのだ。

 単的で短い会話文なので、要領を得ない言葉に。総理、今泉善次郎は。何のことだかわからない。

「何か心当たりがあるのかね? 外交という事なら、先にアメリカ合衆国の方に会って欲しいのだが」


「ん~心当たり……。あります」


 心当たり、あるのである。これが。 

「むしろこれからお世話になります、てきな?」

 桃花と雛夏の、何とも容量を得ない回答である。

「通話じゃ何か不味い内容なのかね? だとしたら先にこちら側が知っておきたいのだが」

 善次郎の質問に、桃花と雛夏と実十はそれぞれ……言う。どちらかというと、面会の方が誠意が伝わるという。礼儀作法の問題なのだが、……ここはあえて言わず……。

「ノーコメント」

「同じく」

「僕は何も知りません」

 と、何とも容量を得ない会話ばかりが続く。ここで桃花は雛夏に言う、首相からしたら幼女に相談を求めている女子高生の図になるので違和感を覚える。

「門の事は一回。日本の自衛隊に任せて、そっちの挨拶だけ先に済ませておくのが良いんじゃない?」

「そうじゃな、じゃあ総理さん。1日だけ下さい。速攻で行って、速攻で帰ってきますなのじゃ」

「????」

 いち旅行者としては何ら問題は無い。……ドラゴン来襲で旅行どころではないが。

 善次郎的には、何か動機付けが欲しい。

「それは日本国民にとっても有意義なことかね?」

 国民を第一に考える。

「中国の方との会話が終わったあとなら、ゆっくり時間を作れると思うので。門の問題は電話でも話せるが。その先の『異世界のこと』は、それが終わってからでないと話せないという事で……ここは一つ」

 そんな素直に、簡単に事が運ぶとは思っていない。思っていないが。何か策があるのだろう、と思った善次郎。

「わかった、飛行機を用意しよう。それからボディーガードも用意するがそれも良いかい?」

 そこばっかりはどうしようもなかった。

「よろしくお願いします」

「のじゃ」

「します……? え!? 僕も行くの!?」


 かくして、中華人民共和国に速攻で行くことになった。往復することになった。


◆~Q&A~◆


 Q8、現実世界のステータス画面にはどれぐらいの情報量が書かれているのですか?

 A8、精霊との〈契約者〉の情報。自身の精霊エネルギー(EE)の数値。精霊利子。個人チャット。グループチャット。地方エリアアナウンス。国エリアアナウンス。世界アナウンス。などのログが残ります。ログデータは西暦2020年7月14日現在、現実世界のPCなどと繋げることは出来ません。ステータス画面を目視でみて、その内容を記入することは可能です。また、スマホやカメラでステータス画面を撮っても何も映りません。


 Q9、この世界の地球で、精霊に実体はありますか?

 A9、あります。触れますし、他人からも観えます。異世界でも同様です。

 

 Q10、桃花と雛夏は、吸血鬼大戦で何をやったのですか。また何故、中国が出てくるのですか?

 A10、少なくとも湘南桃花と雛夏は、現場に居たにも関わらず世界の事を。世論を知らなかったので。本人達も何をやったのか解っていません。それを確かめるために中国へ行きます。桃花的には中国とは友情関係にあるはずなのに。何故世界でここまでこじれているのか、不思議でなりません。

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