第54話 7-4
「・・・久しぶりの蓮見さんだ・・・」
俺を見下ろす蓮見さん。
見えない中で好きな人に身体を触られる初めての体験と、明らかに縮まった距離に、可愛さ増し増しに見える蓮見さん。
・・・ぎゅ。
ぎゅ、ぎゅ。
視線を合わせたまま、つないだ手を握ってみる。
初めての状況に少なからず緊張していた俺は、視界が開けて蓮見さんを見れた事に安心してしまった。
「・・・・・・今、俺と蓮見さんしかいないんですよね・・・・・・」
「?そうね・・・」
不思議そうな反応で相槌を打つ。
「・・・世界に俺しかいなければ、蓮見さんを傷つけないのに・・・」
見開かれた目が、ふっ・・・と細められて、笑った、と思った時には、俺がさっきしたように、手を握り返されていた。
「そういう・・・恥ずかしげもなく言葉にするの、バカみたいって思ってたけど、あなたに言われるのは嫌だと思えない・・・」
「・・・あなたがそう言うの、私結構好きって言わない蓮見さん、ブレなくて好きです。」
「素直すぎない?」
「正直者なので。」
「・・・正直に生きると傷つく事も多いのに・・・」
蓮見さんの右手が俺の額に触れ、頭を撫でる。
「・・・・・・自分に嘘をついて生きる方が俺は苦しい。だから、蓮見さんを好きなのも諦めたくないし、蓮見さんも自分が嫌だと思う事を誤魔化さないでほしい。それだけです・・・一緒にいられるのが嬉しいんです俺は。」
蓮見さんの手に手を重ねると、少しだけ反応はしたけどそのまま左手と同じように指を絡めて握り合うカタチになった。
「はは・・・これじゃあ、ほんとに動けないですね(笑)」
「・・・そうね、お互いに」
「・・・怖いですか?」
「・・・・・・ううん、怖くない・・・・・・」
「・・・それだけで、感無量です・・・」
「大袈裟じゃない?」
「大袈裟じゃないですよ、こんな風に触れるなんて思ってもいなかったんですから。それに・・・こういう事にもキモチの波があるってことですよね?」
蓮見さんの瞳が揺れ、少し陰が差した。
「前に蓮見さんが言ってたので確認をしたかったんです。責めてるように聞こえたなら謝ります。今は平気だけど、そうじゃない日もある、そういう時もあるし、大丈夫な時もある。それは、特別な事じゃなくてきっと当たり前のことです・・・。受け入れるのも、ノーと言うのも、したいことも、嫌な事も、言ってよくて、言わないとわからないことだから・・・これからもそうしていきたい・・・。」
両手をつないでにぎにぎ・・・
にぎにぎ・・・・・・
いつまででも出来てしまうけど、そろそろ寝ないと明日は休日ではないんだから。
「蓮見さん、そろそろ寝ましょうか」
最後に手をぎゅっと握って、溶け合うように混ざり合っていた熱が離れていく。
「俺歯磨きしてきます」
ベッドから降りた俺の背に、
「ふふ」
堪え切れないような笑い声。
「え、なんですか?」
「ふ・・・(笑)歯磨きって、ちょっと可愛かった」
「なっ、え、言うでしょ?!歯磨きって!」
「言うけど(笑)」
「~~~!!なんですか、ばかにして・・・」
「違うわよ、可愛く見えて困ってるの」
・・・
・・・・・・わぁぁ~~お。
ちょっと複雑なのに嬉しいぞ。
「私もしてこよっかな、歯磨き。」
「!!蓮見さん!!」
「なぁに?」
「やってあげましょうか?!」
「それは結構。」
ピシャリとはっきり『いりません』の拒絶。
あぁっやっぱり、どんな蓮見さんでも大好き・・・!!
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