第44話 6-6
「・・・蓮見さん・・・俺・・・大福、大好きなんです・・・」
「え・・・?大福・・・??」
「今目の前に、俺の腕の中には、とてもとても美味しそうな大福があるんです。でも、俺は・・・それを食べちゃだめ、って決められてるので、・・・さわれません・・・」
白い掛け布団は、ホテルで定番の白いカバーが掛かった掛け布団。
サラサラした手触りなのに、熱く汗ばんだ俺の手は布団に張り付く気がした。
目の前にいる蓮見さんに対して取るべき言動の正解が導き出せず、かと言って茶化してしまっていいのか正解もわからなくて、心臓は逆流しそうな程煩く音を立てる。
耳障りな流行りのアイドルの曲が流れる密室。
愛だの恋だのキスだの会いたいだの私を見てだのって・・・うるさいんだよ・・・!
「・・・・・・蓮見さん・・・今日、どうしたんですか・・・?」
俺は大福を抱きしめていた腕を解き、背後に両腕を着いた。
・・・だって・・・だめだ・・・こんなに近くて、簡単に触れられる距離なのに、蓮見さんの気持ちがわからなさすぎて距離を取るしか方法がない・・・。
「・・・わからない・・・」
「・・・・・・何がです・・・・・・?」
「・・・困ってる・・・」
「・・・・・・何に・・・・・・?」
顔を出した大福は、眉間に皺を寄せて、口をへの字に結び、「わからない、困ってる」と俺を見上げて睨みつけた。
「~~~~~!!もぅ!!嫌いッ!!」
「ちょッ蓮見さん?!」
顔だけ出ていた大福から、ズボッ!!!!っと生えた両手が、バシ!バシ!!と布団を叩いて、「嫌い、大嫌い」と言葉を放つ。
「蓮見さんっ・・・手、痛めますよ・・・ッ」
「なんでッ・・・なんでよ、ぉ・・・・・・嫌い・・・嫌いなのに・・・」
いくら叩いているのが布団だと言っても、あまりにも力任せすぎて、俺は握られて布団を叩きまくる蓮見さんの拳を両手で受け止めた。
俺の片手には1つずつ納まった蓮見さんの握りこぶし。
触れているのに怒らない蓮見さん・・・
どうしたんだよ・・・
「・・・すいません、俺・・・」
「・・・・・・じゃなぃ・・・・・・」
「え?」
「・・・・・・嫌い・・・きらい、なのに・・・・・・いやじゃ、ないの・・・・・・」
・・・・・・は・・・・・・?????
予想外すぎる言葉に、俺は言葉がどこかへ飛んで行ってしまった。
「・・・は・・・はは・・・ま、さか・・・え・・・」
「・・・・・・嫌じゃないの・・・どうしよう・・・・・・前みたいにできない・・・・・・」
「はっはす、蓮見さん・・・!!泣かないでよ!!落ち着いてっ!!」
「うわぁぁ・・・ぁぁぁぁッ・・・」
「えぇぇぇぇぇぇ・・・ッ」
子供みたいに大泣き。
堪えて泣くとかじゃなくて、泣きじゃくるという大泣き。
「嫌だぁぁぁ・・・ッなん、なん、でッ・・・好き、じゃない、のにぃッ」
「・・・(笑)」
こんなに大泣きする蓮見さんがそんなに泣いている原因が俺なんて・・・。
嬉しくてニヤけるし顔が緩んで仕方ない。
涙と鼻水でグチャグチャになってきた蓮見さんにティッシュを渡す為に、大福を囲んでいた足をどかした。
「!まっ・・・」
「蓮見さん・・・?」
「・・・・・・飽きた、の・・・?」
はい・・・もう、アウト。
蓮見さん、あなたアウトです、人の気も知らないで、自分から俺の手掴んでそんな風に見上げて・・・
「・・・蓮見さん、最初と今・・・俺の事、あの時と同じくらい嫌いですか?」
手首を握る蓮見さんの手が熱い。
俺の言葉にびくっとしても手が離れる事はなく、咄嗟に取ってしまった行動に自分でも驚いている。
ベッドの枕元からティッシュを数枚引き抜いて、蓮見さんの顔に押し付けた。
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