第196話 機動部隊(2)

「…んだこりゃあ?渋滞かよざけんな」


渋滞したサン・ディエゴフリーウェイ、銀色のプリウス、最大7人乗ることのできるこの車の最後列の座席、隣に座る男はそう怒鳴り散らすとケッと窓の外を覗く。


「あ〜あ…おっ、餓鬼が乗ってる車があるな〜、いいねぇあいつら殺していいか?」


「それをやって何になる?ただでさえ俺達は失敗したんだ。これ以上ヘマをしでかしたら俺達の命はないぞ」


隣のお口のマナーがなっていない奴は銃の腕前こそ買われているものの元の素がこうなためあまり好かれていない。


かく言う彼、その場を仕切るリーダーを任された彼は不測の事態のアレについて考えていた。


というより元から反社会的勢力の者、さらには社会不適合者の集まりというのは適正ではないかもしれないが…


とにかく【苦しみのサーファー】…ネット上で集めた【ネットサーファー】共は社会に不満を持つ者を世界各国から集め、それをカルト教団みたく洗脳やら何やらで従わせ、現代社会に不満を持たせ、行動に移させる。


ありえない話のように感じるが、幸いなのかあの日以降この組織に入るメンバーは増えつつある。


全てはニューヨークが崩壊した日、あの日から失業者の増加、物価の高騰、政治的な空白と混乱…


何より異質なのはドラゴンと言われる存在、ファンタジー的なこの存在が不安を煽り、これらが全て社会への不満に繋がることへとなったのだ。


「…大体あんたが早く大統領を殺せば済んでた話だろ!YouTubeで配信するだかなんだか知らねぇけど殺せなきゃ意味ねぇだろうが!」


隣の彼はこちらをギラリと睨みながら、そう毒づく。


「方針は方針だ。元々彼らの本来の目的はアメリカではなくイギリスだ。強い同盟関係を砕く意味で今回の計画は企画したんだ。大体…」


大体……何だあれは?何故軍用ヘリコプターがここに来た?


「我々はとにかくボスに詫びを入れなければならん。今回は不測の事態も…」


その時だった。


ババババババババ


上空をヘリコプターが通過する。その姿は悠然たるや、UH-60 ブラックホーク、先程見た軍用ヘリコプターと瓜二つの姿をしていた。


「なっ…ありゃあ…」

「おい!ヘリコプターが来たぞ!」

「落ち着け!車の中まではバレねぇはずだ」

「そ、そうだな、民間人もいるわけだし…」

「奴らだってここで銃撃戦はしないだろ」


車に乗る面々はそのヘリコプターの音に驚き多少取り乱しながらも、すぐに冷静さを取り戻す。


(しかし何だか変だ。いつになったらこの渋滞進むんだ?)


あの場からは遠く離れた場所から様子を見ていたボスの右腕は異常なしと謳っていたにも関わらず、このザマである。


「だーーー!!!もーーー!!!うんざりするz__」


隣の彼がそう発した。しかしその声の最後はよく聞き取れなかった。


ダン!


この音が同時に聞こえた。右にいる隣を見れば彼は撃ち抜かれていた。その頭を右から左に……


私は左を見る間もなく、咄嗟に拳銃を取り出し、小窓があるはずの位置に発砲した。


バァン!


一発の銃声をきっかけにざわめき、そして気づけば黒服の特殊部隊が周りを取り囲んでいた。




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