第192話 大統領と車列とTSA(6)

2022年9月16日 現地標準時

午後2時29分

アメリカ合衆国 カリフォルニア州

ロサンゼルス警察署

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「ロングビーチハイウェイで大統領車列の襲撃です!」


「警備部に出動要請!LAPD(ロサンゼルス市警)の名にかけて大統領を救出しろ!」


「車列襲撃の影響でロングビーチハイウェイで渋滞が…」


「既に現場に向かった警察官4名の応答が…」


「相手は機関銃のようなものをこちらに乱射してきていると…」


「襲撃者は全員自動小銃を所持しているもよう!全警察官に自動小銃の使用許可は既に出ています!」


「ノースハリウッドの非じゃないぞ!もっと増援を送れ!」


「増援の特殊部隊の到着を急がせろ!ヘリはまだ現場に着かないのか!?」


「SCARやコルトSMGを使ってください!拳銃では精度が…」

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同時刻 フロリダ州 ケープカナベラル空軍基地


「衛星映像確認!民間人を巻き込む大規模な銃撃戦が発生!」


「大至急国務長官と副大統領とダイレクトラインで繋げ!」


「現在までに地球外生命体の情報なし。大統領車列襲撃は敵対組織のテロと推定」


「エドワーズ空軍基地との連携とれました!空軍機の緊急発進いつでも可能です!」

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-カリフォルニア州 ロングビーチハイウェイ-


バラバラと撒かれる弾薬が奏でる音を聞きながら、トーマス フォードはこの状況を打破しようと模索していた。


(ひとまずは弾切れを待つほかあるまい…あの銃弾の雨を突破するのは無理だ…それに…)


それに…車列襲撃から既に20分は経過しているだろう。それ程まで長くここで膠着し、戦闘を繰り広げている。


M2重機関銃ともなれば後から増援としてやってくる警察官を散らすのは簡単だろう。そもそもパトカーのサイレン自体、銃声でかき消されているのか聞こえない。


(LAPDは慢性的な人員不足を抱えてると聞く…クソッ!こんな大事な時に…!)


だが銃声はまだ止むことはない。M2重機関銃はいまだに銃弾を撃ち続けている。時折響く爆発音はおそらく一般車が弾け飛んでいる音なのだろう。


僅か前方にいたSPの特殊部隊はほとんど壊滅したのだろうか。私のもとに来ていた部隊の声は消えていた。


その時再びの爆発音、どうやら相当派手にやってくれてるらしい。世界的な歴史に名を残すつもりのようで、爆薬弾薬を惜しみなく使っているのだろう。


(…私達を表に出さない気だな…これでは完全に車体で防ぐことのできない自動車は使い物にならない…トラックなどの大型車でなければ…)


今現在私がいるトラックを撃っている様子はなかった。近づいてきているアーミーマスク連中もいない。ただM2の弾幕が張られている隙に後退したと見るべきだろう。


だが…違和感があった。M2重機関銃はまだ撃っている。そして爆発も続いている。


そう奴ら3分以上ほぼ撃ち続けている。途中リロードや銃身の冷却をする様子はあったがいまだに撃ち続けている。


(奴らの目的は大統領暗殺…だが何故いまだに撃ち続けて撤退しない…大統領の車両は既に瓦礫に埋められて安否は…)


安否は…分からない。だが薄々全員気づいていた。大統領の命はこの状況でほとんどないだろうと。だがそれでも職務上大統領の安全を確保するため彼らテロリストと戦わなければならなかった。だが彼らが撤退せずにここにいる理由、それは…


(大統領は…まだビーストは破壊されていない…さっきの爆発はおそらくビーストを…)


…希望が見えてきた。今既に25分経った。銃弾が無くなるのが早いか。ここにいる全員が死ぬのが早いか…


いやどちらでもなかった。その憶測を掻き消す音が上空から颯爽と現れたのだ。


ババババババ


そのヘリコプターは軍用ヘリコプターだった。ただし黒塗りでどこに所属しているかも分からないヘリコプター。


ただ分かっているのはそのヘリコプターには重機関銃よりも弾幕を張れるGAU-19というミニガンが取り付けられていること。


UH-60 ブラックホークが一機、風を切って現れた。

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