1965年(17)
「何を…言っている?」
「私がここで死ねば…あなたは今のあなたでいられますか?その地位に…」
「…!貴様私を脅しているつもりか!死にぞこないがここで死んだところで変わりは…!」
「本当にそうお思いですか?」
「…!ッ!」
シェレーピンは言葉を詰まらせる。周りの兵士も突然の出来事に固まっている。
だからと言って私含め、動くことはできない。兵士達が意識をすれば私達を殺すことなど容易いことだろう。
…どうすることもない。沈黙が続く。ステパーシンは何も言わない。
「…!そこまでして…何が目的だ!?」
シェレーピンは我慢できなくなったと言う感じでそう言うとステパーシンに鋭い眼をとばす。
「先程も言いました。私は…機密捜査部門の情報を開示し、こちらは攻撃していないことを信用してもらう」
「奴らが信じるとでも言いたいのか?論理的に話してみろ!」
「ですから…グッ、私は…」
その時だ。周りを囲うようにしていた兵士達、その間を通るようにやって来る人物がいた。
「まったく…あんたらは交渉というものを知らないようだな。大佐含めて」
「ジョーヒン…」
私はその名を呼ぶ。兵士達の間を通り過ぎようとするが、兵士達はそれを許すことはなく二人がかりで止めようとする。
だがその直後、ジョーヒンは右腕を兵士の顔目掛けて振る、その勢いで兵士は蹌踉めくが、すかさずその兵士の膝に右足を掛けるやり方で思いっ切り蹴りを入れる。
もう一人の兵士は余った左足で腹あたりに蹴りを入れ、そのまま勢いに任せて吹き飛ばす。
事に気づいた護衛の兵士、あと二人がジョーヒンに困惑の視線を向けるが、ジョーヒンは左側にいる兵士に棒状のようなものを懐から取り出し、投げつける。
その間に、右側の兵士に近づき、左腕を掴んだ後、自身の右腕を顔面にぶつけ、飛ばす。
その後、すばやく棒を投げつける兵士に近づくと、タックルの要領で雑に吹き飛ばす。
気がつくと護衛は全員片付いていた。
「なっ…スペツナズを…一瞬で…」
シェレーピンは驚いたようにそう言うとジョーヒンはまってましたとばかりに答える。
「おや?私がKGBに入る時言いませんでしたかな?スペツナズの一隊の隊長であったと?それに彼らはまだ若造、随分と余裕があるようですな」
「KGB?なら何故貴様がこいつらを制圧した?」
「まあ…ちょっといろいろありましてな。議長。それはどうでもいい、取り引きをしたいと彼らは言っているのです」
「取り引きだと?貴様何を言ってる?次から次へと出てくる裏切り者の取り引きを…」
「遮るようで悪いが大事な事だ。アメリカの機密をもっと知りたくないか?彼は知ってる」
「…何?」
「胡散臭いCIAの事だ。こいつから色々な事を聞いたが…直接彼らを揺すぶったほうが早い。材料はその手紙だ、本来そういう手紙は読んだ後、燃やすはずなんだが…とにかく、それがあれば奴らの動揺を誘える」
「そんなうまくいくものか。甘いな貴様らは」
「そうか。だがあんた、戦争のリスクも当然知ってんだよな?中途半端な覚悟を持った奴は真っ先に殺される。スペツナズで学んだことだ。いつ命が狙われるか分からないぞ」
「私を臆病だと言いたいのか!?」
「……さぁな?俺をクビにしたきゃすればいいさ。定年にはまだ早いが、話は終わりだ」
「なっ!?まだ終わっていないぞ」
私はジョーヒンの勝手な行動に声を荒らげてしまう。
「ナワリヌフ、いい加減気づいただろ。もう話は終わりだ、あとは議長次第。俺達は大人しく牢獄の中から様子を見よう」
「議長に全て任せると言いたいのか!?」
「そうだ。俺達はできることをやった。後悔はないだろう?…議長、身柄を拘束しないのか?」
「…貴様は雇った時は覚えていないが、貴様を雇ったことを後悔している…早く連れて行け」
ビルの入口から入ってきた兵士達に指示を飛ばしていく。ジョーヒンの先程の格闘でも数が数であり無理だろう。
「死刑だ」
「どうぞ、ご勝手に。その手紙大事にしてくださいね」
ジョーヒンはシェレーピンの一言に動じることなくそう言った。
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