第113話 成功
「全員降りろ降りろ!」
白髭の声が兵士達を動かす。M4カービンを構え、次々とオスプレイから出てくる。
丁度今、一台の飛行機が飛び立った良いタイミングだ、これを機に飛行機は飛べなくする良いタイミング。
滑走路に降りた兵士達はこちらにやって来た空港の警備員に止められる。
「…こっちです。空港内はあちらから入れます」
幸いにも話は通してあったためかスムーズに話が進んでいる。
「怪しい人物は?髪の色が変な人物は見かけなかったか?」
私は警備員にそう問いかけると警備員はしばらく考え込むようにして
「いえ…見てませんね。私は正面玄関にいたわけではないので。他の職員なら知っているかもしれませんが」
「ならば早急に他の職員に確認を頼む。知ってのとおり異常テロリストがこの空港に潜んでいる可能性が高い」
空港にはテロリストがそちらへ向かっているという虚偽の情報を掴ませているが、そもそもテロ対応のSWATはオスプレイなんか持たないので少し詳しい人からすれば間違いなく軍だと見分けがつくだろう。
警備員は深刻そうな表情をしたあと
「確認します」
そう言うと警備員はトランシーバーを取り出す。この場には他の警備員もいたがそれぞれがおそらく聞く必要はないだろう。彼が聞いてくれるはずだ。
『こちらシータ、異常な人物は見当たらない』
『こちらトリヴァー、同じく発見できない。捜索を続ける』
おそらく空港では武装した人間が乱入してきた混乱があるだろう。無線越しに民間人の困惑の声が聞こえる。
「いささか目立ち過ぎた可能性がありますが…」
白髭は私が考慮していたことを呟く。無人偵察機と後続の部隊が付近の捜索を行う手はずとなっている。シャーロットにいることは間違いないのだ。飛行機も一時的にだが飛べなくしたから国外には出られない。
「必ず近くにいるはずだ。米軍の威信にかけて捜し出せ」
白髭は険しい表情でそう言った。
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20分間という短くも長くもある捜索が行われた。
結論から言えば…彼らはいなかった。地下水道も隈無く捜した。衛星も無人偵察機、ありとあらゆる監視カメラを確認した結果、空港の入口にはいた。だが中での映像が確認できなかったのだ。
この空港ではなかった。いやそんなはずはない。この目で見たのだ。彼らの髪色を。間違いない。夜とは言え…
「何故だ…何故見つからん…民間人からの情報はないのか?誰でもいいんだ!」
白髭がそう言う中、私は明かりのついた飛行機を見ていた。今は空港内にいるわけだが、人々がごった返している。
飛行機は飛んでいない。逃げれない。だが30分前には飛んでいた。
「飛行機内に潜んでいる可能性はないのか?先程飛び立った飛行機があるはずだ」
「3機ね。行き先がそれぞれ違う飛行機、でもその線は低いわ。飛行機内の人にも問い合わせたけどそんな人物はいないとのことよ」
「……私の休日は最悪な形で終わるものだ」
「まだあと1時間あるわよ」
何の慰めにもならなかった。
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『ご利用いただきありがとうございます。快適な空のお旅をご楽しみください。当機は10時間のフライト、行き先は…』
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『中国、香港となっております』
俺達は飛行機の貨物室の壁越しにアナウンスを聞いていた。エンジン音を聞きながら俺は安堵してその場にへたり込んでいる。それは俺だけではないのだが。
「魔法パワーがなかったらこんなことはできなかったぜ。マジで…」
ヒカルが大きな荷物に座ってそう言う。だが何故俺達が貨物室にいるのか…
事の発端は空港に着いた時である。ヒカルは「チケット買う時間がねえ!」と言った。そしたらアナリスが「不法侵入でいいんじゃない?」と言った。
さてそんなわけで、勝手に滑走路に入ったわけだ。身体強化のおかげでなんなく入れた。キルアの超感覚で警備員もうまく躱せた。
さて、問題はどうやって飛行機に乗る?になる。飛行機のドアというのは思ったより地面から高く、それ以前に開いていない。
一同「入れねえ」と言ったわけだが、ヒカルはたまたまリフトで運ばれる楽器箱らしきものを見た時だ。
「アナリスの状態変化でなんとかならない?」
というわけで丁度良い大きさのごった返した貨物を器用に繋ぎ、カノンがばっさりとサイズをこれまた器用に調節し無事貨物室に侵入したわけだ。
その頃にはオスプレイは空港に着陸していた。この状況で自分でも何故成功したのかは分からない。
「なんだ、レバノンじゃねえのな」
ヒカルが意味深な笑みを呟いてフライトは続く。
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