第99話 米軍VS異世界人(7)

「追ってこないな」


俺は安心しきってそのままトラックの上で寝転がる。危ないが仰向けになって目を少し閉じる。


「危ないからやめたほうがいいですよ…」


カノンが心配…いや呆れた表情でこちらを見る。いや疲れたから…うん。


俺はその体制をやめることなくそのまま寝そうになる。


「めっちゃ静かだなあ。車ってやつが1台もないとこんな静かなんだな」


「そう…え?それおかしくない?」


「ん〜?」


俺は間抜けな声で何がおかしいのか確かめようと体を起こそうとするがその前にアナリスが言う。


「対向車線に車がない…」


それのが何がおかしいのかと言おうとした時、俺は後ろから何か平べったいものが浮かんでいるのが見える。


「ねぇ、あれ何?」


俺はその正体を探るべく聞く。


「どれどれ?んん〜。なんか灰色っぽい虫じゃないのか?この車くらいの大きさ並の虫」


「…………」


キルアが言った言葉を理解したのは…キルア以外の全員だ。

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アメリカ合衆国 ノースカロライナ州上空

E-4(空中指揮機)機内


「ウォーカー1。目標のトラックへのレーダーコンタクトを開始」


「高速道路の封鎖完了。民間人の姿見えません」


「目標地点到達まであと10秒。発射地点スタートポジション」


「武装を解除。攻撃開始。繰り返す。攻撃開始」


《衛生映像でF-22から放たれるミサイルがトラックに直撃するのが確認できる》


「生体反応を確認中」


「トラック機能停止。動きがありません」


「ウォーカー1を旋回。第二波攻撃準備」

____________________

「まさかアンドルーズ空軍基地からF-22をスクランブル発進させるとはな」


「ええ、私だって驚いているわ」


路肩に黒のセダンを止め、私は白髭のもとへと向かう。白髭は近づいて来る私に気づき


「おぉ、いやはや多少強引になりましたな。しばらく高速道路の下り線は使えないでしょうが致し方ない」


「奴らの現在の様子は?」


「F-22、ウォーカー1がSDBを投下。現在確認中」


「なるほど…」


「シリアでの爆撃にも採用された小型爆弾、奴らが生きている可能性はないでしょうな」


と白髭が言った時、無線でのやりとりを行っていた兵士が叫ぶ。


「目標に動きありとの報告!空中指揮機からです!」


「何!?第二波は!?」


「すぐに行われます!」


直後再び遠くで爆発音がする。炎は道路の都合上見えない。


「第二波着弾!生体反応確認中とのこと!」


「F-22のウェポンベイには確かミサイルが4つ入るはずだ!全て撃ち尽くせ!最悪M16A2機関砲で攻撃するように伝えろ!」

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痛い痛い痛い。


なんだか分からんがそう感じる。どこが痛いかも分からないがそう感じる。


どうやら俺はコンクリートで横たわっているらしい。隣ではパチパチと言う音がする。


空高くに戦闘機が飛んでいる。グルグルと回って。


俺は頭の方がなんだか生温かいことに気づく。そして手をやると…


肌色の手は真っ赤に染まる。てかなんでだろ、左目が開けにくい…


体を動かそうと立つことから始めようとするがうまく足が動かない。


どうにか中腰にまでなる。そして俺は目の前の光景を目の当たりにする。


トラックは横転して燃え、道路を塞いでいる。燃料なのかそれが漏れ出し、今でも燃え移りそうだ。


コンクリートは弾け、木々の枝が道路に散乱している。


「……え……」


俺はやっとのことで口を開く。なんだよこれ…


俺は状況を探るべく歩こうとした時、ヒューという音と共に何かが高速で近づいて来る。


「…あぁ…なんだよ…」


多分ミサイルだろう。それは一直線にこちらへと放たれ目の前に現れる。


(死ぬ…か?俺)


俺はうまく回らない頭で唯一そう考えることができた。


ゴオーンという爆音が向かってくる。そして爆発…はなかった。


ミサイルは俺の目の前で静止していた。不自然にそれは空中で止まっていたのだ。


「早く!今のうちに!」


カノンがいつの間にか俺の後ろで剣をミサイルに向けて立っている。


「カ、カノン!?」


「早く!逃げてください!」


俺は言われるがままに逃げる。ダサくて滑稽だと自分でも思った…


「[剣聖の加護]が…ィッ…!」


カノンはどうやら剣にほどこした魔法でミサイルを止めているようだ。だが…


チュドーン!


ミサイルは地面に到達することなく爆発する。風が吹き荒れ、俺は咄嗟に顔を守る。


しかし俺は先程風が吹き荒れる場所とは別の場所にいた。


そして俺の体に何かが纏わりついている。キルアだ。


「あ、危ねえ…」


キルアは口元を拭ってそう言う。隣にはカノンもいるようだ。どうやら俺とカノンはキルアに助けられたらしい。


「……あ、その、助かりました」


「なぁに気にするなよ、お互い助け合いだろ?」


キルアが何やらカッコいい事を言ったが戦闘機の音でその半分はかき消された。


「早くここを離れましょう!アナリスさんとヒカルさんは!?」


「あいつらはトラックの中に…悪い、あたし見つけきれなかった…」


とキルアが言った時、トラックで爆発が…だがそれと同時に見たことある二人が姿を現す。


トラックは爆発炎上しているがその炎はすぐに消え、大量の冷気が辺り一面を覆う、


俺達が駆け寄ろうとした時キルアが


「……例の変な爆発するやつだ!あの音がまたこっちに来るぞ!」


「な、爆発?何が…」


「頭の血は大丈夫ですか?走れますか?」


矢継ぎ早にいろいろと事が進む。カノンは俺の傷を心配して顔を覗き込む。


「き、来やがった!」


ミサイルは俺達の横からビューンと現れる。しかも2発だ。


「私が[剣聖の加護]でどうにかします…アナリスさん!」


「大丈夫!分かってるから」


アナリスとヒカルの方が俺達に近づき、そして


「[運動変化]![冷却]!」

「[剣聖の加護]![防御の心得]!」


それぞれが魔法を言い出す。俺とキルアにはそういう魔法はない為ただ呆然としつくしかない。


ミサイルは2発同じく空中に静止し、先程と同じような冷気が辺りを覆い、カノンの目の前には剣を中心に巨大なバリアーが浮かび上がっている。


「ま、眩し、うわっ」


それらの衝突は凄まじい衝撃を生み出し続ける。


そしてミサイルは2発とも高速道路回りの森へと向かって


爆発した。





















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