第92話 問題発生

「え?飛べない?ほんとですか?」


「ワシントンDCで非常事態が発生したとかで飛行機を安全の為に飛ばせないんだ」


ヒカルが困惑の声を上げて職員に聞いている。



--アメリカ合衆国 バージニア州 ダレス国際空港--



「日本に帰れないんですか?日帰りのつもりじゃなかったけど困るんですけど」


俺はちょっと失礼だが言ってみる。なんとな帰れないのだろうか。


「う〜ん。ボルチモアの方も駄目だから…一番近い場所だとハリスバーグかリッチモンドかな」


職員は困ったようにそう言う。


「あ…すみません。ありがとうございます」


俺は思わずそう言うと


「いえいえ大丈夫ですよ」


と笑顔で返してくれた。


「飛べないのか。ハリスバーグとリッチモンドって場所どっちが近いわけ?」


「そうだなあ。ハリスバーグかな?」


「ああ、待ってくれ!」


俺とヒカルが話している時、職員が俺達に慌てるように話しかけてきた。


「ハリスバーグもさっき駄目になった。リッチモンドは行けるらしいからそこしかない」


「ええ!?」


地理をよく知っているヒカルだけが驚いた。


「しょーがない。リッチモンドに行くか」


「ちなみに距離ってどのくらいなんですか?」


「400km」


「「まじかよ」」


俺とアナリスが久しぶりにハモった。


その後は親切な職員のおかげでバスもスムーズに見つけることができたのは助かった。


「ありだかいな。ほんと」


ヒカルは結構人の感謝を噛みしめるタイプらしい。そういうタイプとは思わなかったので意外だ。


「あれですか?」


カノンが指差した先には赤でカラーリングされたバスだ。ヒカルはそれを見て


「よーし、今から数時間の旅だあ!頑張るぞ!」


「もうやだ」


俺は愚痴をこぼした。


そして俺達はやって来たバスに乗ることにした。

____________________

2時間が経った頃、あんまり酔わない体質の俺がスマホを見ていた時、辺りが騒がしいことに気づく。バスが止まったらしい。


-州間高速道路95号線-


高速道路というのは渋滞がない限り止まることはないらしいのだが。どうやらその渋滞らしかった。


「なんかあった?」


俺は慣れないスマホに夢中になって気づかなかったのでヒカルに聞いてみる。


「いや分からん。けどなんか嫌な予感がする」


「なんで?」


「軍がいない?」


軍というフレーズはこの世界に来てから頻繁に聞く。


「あれかな。ハンヴィーとかいうやつ」


「どこ?アナリス?」 


俺はアナリスが言うものを探す。確かに路肩には装甲車が2台止められていた。天井の突起部分に人がいるのが分かる。


「ええ、なんだよ進まないじゃあん」


「まあまあ落ち着きましょうよキルアさん」


「ムゥ〜〜〜」


キルアが頬を膨らませる中、バスはゆっくりとだが進んでいる。


するとゆっくりと進んでいるバスのドアを外から叩く者がいた。


ゴツそうな迷彩服を着た男。そしてその姿をニュースや現実で様々見ている。


運転手がバスのドアを開けると迷彩服を着た男、いや男達は入って来る。


「何があったんですか?」


「この先の道路で倒木が起きて、道が塞がれました。普通車両は通過できるのですが、大型車両は通過できないので迂回してください」


「迂回?」


「はい。この先に高速道路の出口がありますのでそこで降りてください。車線変更は誘導します」


そんな感じの会話だった。


その後はスムーズとは言えないが兵士が赤くて長いライトで誘導してバスは一番右の車線へと移された。真面目な顔でライトを振る兵士の姿は少し面白かった。


「なんでだろ。倒木だけなら米軍がなんでいるんだろ」


「ヒカル?」


「これ倒木なんかじゃないと思う。もっと違うこと」


「それって魔物だったり?」


「それはないよ」


俺とヒカルを遮るようにアナリスが言う。


「さっきから魔力感知してるけど何も。魔物はいないよ」


「へえ、なるほど、ってちょっと君ら騒がしいよ」


ヒカルはちょっとうるさくなったカノンとキルアに言う。


「いやー、だって暇だもん。そうだよな?」


「い、一緒にしないでください」


「二人共程々にな」


ヒカルがそう宥めた時、バスは高速道路から降りて、左に曲がった。


バスは先程まで走ろうとしていた高速道路の上を通過する。俺が高速道路の先を見てみると確かに倒木は起きていた。


「なんで警察や救急がいないんだろ」


ヒカルはやはりまだ疑問を持っているようだ。確かに兵士がいることは謎っちゃ謎だ。俺の世界で例えると倒木が起きたら騎士団が動き出すような感じだからだ。


バスはゆっくりと進み出す。目の前には大型トラックやバスが続いている。


俺はそんな様子をただ傍観することしかできなかった。















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