第91話 ワシントン(4)
警察特殊部隊SWATがやって来たのは午前8時20分。
米陸軍第3歩兵連隊がやって来たのはその約15分後。
今や現場は軍用車両と警察車両、そして救急車で埋めつくされていた。
トーマス フォードは自身の身分をTSAエージェントリーダーとは明かさず、FBI捜査官だと言って現場に入ることができた。
とそこで見たことがある人物、同僚の
エレナ シャーロットを発見する。彼、いや彼女は金髪でスタイルの良いアメリカ人だ。だが歳は30を過ぎていると聞くから驚く。黒スーツを着ているがそれを見事に着こなしているのな分かる。
「先に来ていたのか」
「あらトーマス。お疲れ様」
シャーロットは振り向きざまにそう言ってきた。
「あなたも大変ね。この前はドイツに行ってたの?」
「いや、日本だ。私の役割は[人間]の捜査だからな。その為には世界を回らねばならん。エレナは何故ここに?」
「ご存知の通り、FBIだからよ。あなたからこそどうして?」
シャーロットはTSAエージェントとしてFBI捜査官として潜入している。不可解な事件を見つける為だ。
「休日だ。私は不幸を呼び寄せる体質かもしれんな」
私は感情を入れずにそう答える。
「何があったかは聞いてるの?」
「大体は電話でな。化け物が出たらしいが」
「二足歩行のサイよ。今は川の底」
「ああ、だからか」
川の上空には警察のヘリコプターが飛んでいる。何かを探しているかのように飛んでいるのはその為か。
「あの様子だと私達が回収する手間が省けそうね」
「最高機密機関の名前が廃れるのも時間の問題かもな」
「その時はcurrentlyをつければいいじゃない。被ってる機関もあることだし、CTSAなんかいいじゃない」
シャーロットは冗談ではなさそうに言う。
今のところ最高機密機関。なんとも滑稽な名前だ。
「私が知っている限り…」
シャーロットは言う。
「あなたが捜している人達もいたみたいよ」
「何?」
「SWATの人が言っていたの、間違いない」
「奴らは日本にいるはずだ。国際空港の監視カメラで国外に脱出することなどできんはずだ」
「でもしてるみたいよ。どういう手を使ったのか分からないけど」
我々の人捜しプラン。現在九州など言う地域を僅か1月で終わらせたらしいがそれが崩れ去った瞬間だった。
「冗談じゃない。全世界に奴らが現れる可能性があるのか。そうなったら…」
「第2,第3のニューヨークが現れる。いや第4からと言うべきね」
ワシントンが襲われた。アメリカ合衆国の首都が。どういう手段で現れたのかも分からない化け物に。
次はロンドン、パリ、ローマ、北京、モスクワ、東京、リオデジャネイロ、トロント、はたまたシカゴ、ロサンゼルスかもしれない。
何も分からないという恐怖がこれ程とは思わなかった。だが勝算ができた。
「奴らをこのアメリカからは出さん。私に協力してくれ」
「そうなると思ったわよ」
エレナはあっさりそう言うと私に付いてきた。
____________________
アメリカ合衆国 ニューヨーク州
マンハッタン島 ヨンカーズ
マンハッタン島の上部にある小さな街に
ジョン ヴォイドはいた。
「ワシントンだと?ワシントン州か?」
「いえ、ワシントンDCです。こちらを」
警備はそう言って電話を渡してくる。まさかとは思ったが
「私だ」
「大統領でいらっしゃいますか?私は統合参謀本部議長のエリック ウォルナーです。話は聞いていますか?」
「大丈夫だ。被害は?状況を説明してくれ」
「被害は現在測定中。スミソニアン博物館付近にて発生。詳細不明の化け物です」
「私はこれよりニューヨークに向かわなければならない。あとのことはそちらで対処してくれ」
「分かりました。あとは私にお任せください」
ヴォイドはウォルナーにそう言うと電話を切る。その手には自然と力が入っていた。
「なんということだ……」
ヴォイドは思わず小さくそう嘆いた。
____________________
『こちらは現在事件現場のワシントンDCに来ています。ご覧ください。たくさんの警察車両と軍用車両で埋め尽くされており、中にはAPCなどの装甲車もあります。現場は封鎖されていて中までは確認できませんがサイのような生物が突如として現れ、周辺にいた民間人や車両を襲ったとされており、その生物が走ってきたであろう場所には巨大な3本指の足跡がコンクリートに鮮明にのこっており、またあちらを見ますとトラックの後部が完全に破壊されているなど騒然とするような事態となっています。CNNアナウンサーからは以上をお送り致しました』
「ありがとうございます。それでは引き続きニュースをお伝えします」
CNN放送 BREAKING NEWSより
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます