第83話 日常回(3)
「なっ、長い。気になるぞ」
「ここまできたんだからねえ」
アナリスと気が合った俺はそれぞれ不満を口にする。
「まあまあ、しばらく待ちましょうよ」
のんびりとした様子のカノンはそう言ってくるがこういう焦らしは嫌いだ。
レトルトカレーのCMが終わり、そして博物館内部の映像が再び映し出される。
国立自然史博物館
インドの寺院
持つ者を不幸にする
謎多き物
45.52
そして…映し出されたのは
宝石。青く怪しく光る宝石。ダイヤモンドという説明がされているがあの宝石は…
『これはホープダイヤモンドと言いまして、持った人間を死に至らしめる呪いがあると言われてもいます』
ホープダイヤモンド。それがあの宝石の名前らしいがあの宝石の名前は確かそんなのではない。俺達の世界に伝わってきた災厄の魔導具。
「悪魔のオリハルコン」
アナリスが俺が思ったことをそのままに言った。
「は?」
ヒカルだけが唯一その言葉に反応する。
「何それ?悪魔?」
「あの宝石の名前、希望のダイヤモンドじゃない」
「は?じゃない?あの宝石?え?」
「要するにあれは異世界産の物って言えば分かるかな?」
「はっ!?」
ヒカルが思わずソファから立ち上がる。
悪魔のオリハルコン。300年前にとある魔法使いが作った魔導具。あらゆる負の感情が込められており、魔力量は絶大な物とされている。
その魔法使いは神聖ラルス帝国という海に囲まれた国の繁華街で魔導具の効能を発動させた。その魔導具から出てきたのは強大な二足歩行の魔物。そこから詳しいことは分からないがその魔物は倒すことはできずにその魔物の根幹である宝石に封印したらしい。封印後は処理事態はされたらしいが。
「つまり、あれは…呪われてる?そう言えばいいのかな」
「まじかよ…」
ヒカルはアナリスから説明を聞いてドサッとソファに座る。
「じゃああれか?あの宝石を持った人が次々と死んでったのは?」
「封印は完璧じゃない…らしい。だから周りの人々に魔法をかけていたんだと思う。知らず知らずのうちに」
「待ってくれ、なんでそんなものがこの世界にあるんだ?」
ヒカルは俺も聞きたかったことを聞く。それを答えたのはカノンで
「あれは…確か魔導具の特殊処理場に持っていかれたとされています」
「特殊処理場?」
「悪用もしくは人類にとって不利益なことしかない魔導具は普通は火山に捨てられるんですが、まれに魔力量が高い魔導具は火山の熱で溶けきれずに残ってしまう場合があるのです。そうなると回収は不可ですから魔力量が高い魔導具は特殊処理場という場所に初めから持っていくのです」
「なるほどね。続けていいよ」
「特殊処理場と言ってもは射出機というのでしょうか、それで魔導具を高速で発射させて壊すだけです」
「それで壊れるの?」
「射出機には魔法がかけられていて凄まじい速さで魔導具は飛んでいきます。すると魔導具は…」
カノンは一息おいて
「跡形もなく消えます。破片一つ残らずに」
「破片一つ…か」
ヒカルはふーんと納得したような表情を浮かべる。
「そうやって処理した魔導具がこっちに来たってわけね」
「そーいうこと」
アナリスが答える。そして一つ気になることが俺の頭に浮かび上がる。
「他の…他の魔導具もあったりする?その射出機で発射されて魔導具もこっちにとか」
この言葉には誰も反応しなかった。ただ全員同じことを考えていたのか何かを考える素振りをしている。
「……まずいなこれ」
アナリスが深刻そうに続きを話し出す。
「あの魔導具は魔力を持つ者同士が触れ合うと発動するタイプかな。だからこっちの世界の人達は何もなかったんだと思う」
「でも何人か死んでるんでしょ?それはちょっと…やばいな」
俺は頭に宝石のことを浮かべながらそう言う。
「あの…ちょっといいですか?」
カノンが遠慮がちにそう言う。
「ああいう魔導具って確か…時間が経ちすぎると自動的に効能が発動しませんでしたっけ?…何か間違っていますか?」
カノンは多少緊迫した声でそう言った。キルアの寝息がより一層強調して聞こえた。
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