第77話 アフリカ動乱(6)
「ホーク01。目標を捉えた。暴風の渦ができている」
『了解。レーダーホーミングは?』
「反応しません。姿も依然として不明」
『暴風の中心に直接ミサイルを撃て。目にもの見せてやれ』
「了解。全機JDAM発射!」
F-35Bのウェポンベイ、そこから突き出るような形をした細長いミサイルが風の中心部に向けて放たれる。
4発のミサイルが暴風の中心目掛けて飛ぶ。数秒経ったうちには既に地面スレスレを
飛んでいた。
チュドーン!バーン!ドーン!
大きい爆音、それに見合うような爆発と炎が暴風の風域外の大地と建造物を襲う。
「JDAM着弾。JDAM着弾」
パイロットは機械のようにそう告げると操縦桿を横に傾けた。
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「うおわっ!……」
思ったより近い場所で爆発があったことで建物全体がグラつくような感覚に襲われる。GPSによって俺達の場所は把握してあるはずだから巻き込まれることはないのだが。
外を見るとF-35Bが4機横に並んで地平線の方へと進んでいくのが見えた。
「よっしゃあ!しゃあ!」
ハミルトンは心の底から笑い声を出す。この爆発なら…同じことをロイドも思ったのか
「アレク、これで死んだ仲間達の念も晴らせたはずだぜ」
「そうだな」
クリスも同調するように短くロイドに返事する。
「マキシモフ見えるか?」
「さっきから双眼鏡で中心部辺りを見てるが…なんも変わらないし建物が邪魔でどうなったかが分からない」
「もうすぐで応援部隊が到着するはずだ。ここで待機していよう」
F-35Bは地平線に向かうのをやめてこちら側、ギニア湾の方へと帰っていく。
ゴゴゴ……
地面が再び激しく揺れる。
「なんだ!?」
「…!隊長!建物が崩れる!」
「何!?」
マキシモフがそう伝えてくる。俺はすかさず全員に向けて
「建物から出ろ!急げ!」
慌てて建物から外に出る。直後俺達が入っていた家は浮き上がる。
「はっ?」
啞然とするしかなかった。家は5mくらいとドンドン浮き上がっていく。見上げた先には家と土の塊がいくつも浮かび上がっていた。
それらは浮き島のように大地からとられて浮いていたのだ。
何も話せない状態でいるうちにF-35Bがこちらへと…
次の瞬間には先程まで何事もなかった機体が爆発した。浮かんだ家にぶつかったようだ。
機体は俺達の頭上を炎上しながら落ちていき、爆音を響かせた。
『こちらホーク3!ホークth』
再び機体が炎上ながらまた墜落していく。そこでようやく声がでる。
「退却!退却!離れろ!行け!」
切迫づまった声でそう言う。額から汗が滲み出た。
俺達は走る。とにかくその場から離れようとした。後ろからF-35Bのエンジン音がこちらに近づいてくると同時に地面の土や建物が塊となって浮き出す。
それを避けながら宙へと飛ばされないようにする。ふと後ろを振り返る。全員付いてきているかを確認するために。
F-35Bは俺達より少し後ろを俺達に付いていくかのように飛行していた。その機体は突如浮上した土の塊によって真正面からぶつかる。
破片だけが俺達に向かってくる。あれに当たったら死ぬ。けど避けようがない。
運に身を任せるしかなかった。破片は俺達の真横を通り過ぎ地面をえぐり取っていた。
スザザザァァァ
鉄が擦れる音がする。俺達は走り続ける。とにかく離れなければ…地面はあちこち浮き上がり、もとあって家の半分くらいは宙にプカプカと浮いていた。
しかし突然それら浮遊物が一斉に動きをとめる。ピタリと。
俺はそれに気づいたが声を上げるわけでもなかった。というかそんな暇もなかった。
浮遊物は一斉に落下する。今になって物理法則がはたらきだしたのかと思う程早く。咄嗟のことだが思考はよく回った。
「あの建物の中だ!落下物に気をつけろ!」
一斉に落ちてくる浮遊物を避けるため俺はまだ浮かんでいなかったバラック造りに近い建物に逃げることにした。そして最後尾のロイドが建物に入った瞬間に
ドン!ドォーン!
辺りに落下音が響いた。
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