第56話 [俺]

「ビジネスホテルでも3時からしか開いてないってのがなぁ。暇だぞこの先」


「500円玉がめちゃくちゃジャラジャラするんだが」


「財布買いに行くかって…あ…」


「どした〜?」


ヒカルは何かを思い出したかのように立ち止まる。


「その前に銀行だ!この国の法律で同じ硬貨を10枚以上使ったら駄目なんだ!」


「はぁ!?そんなこと先に言えよ!」


500円玉を造幣したアナリスが怒る。


てな訳でまずは銀行に行って、安物の財布買って、バック買ってなどを繰り返していたらいつの間にか1時を過ぎていた。


その後はコンビニで買った弁当を食べて移動をしていたらなんと驚き3時を過ぎていた。

時間が経つのが早いと感じた瞬間だ。


そして俺達がビジネスホテルとか言うお手打ちの値段のホテルへと行く途中のことだ。ヒカルが俺に質問してきたがその内容は結構驚いた。


「異世界の1日は24時間なんだよな?」


「当たり前だろ。365日で1年だ」


「へ?アナリスの話じゃあ異世界の面積は地球の面積の3倍なんだろ?自転周期や公転周期が速いのか?」


「知るかよその辺のことは」


難しい単語をぶつけられて思わず頭が痛くなった。


「えっと?いいですか?私達の世界では1分は60秒。1時間は60分なのですが」


カノンが話に割り込んできた。無論これは俺達にとって当たり前のことなのだが。


「ほ、ほう?なるほどな。ますます分からんぞ」


ヒカルは勝手に頭を抱えた。


「何が分からないんだ?」


キルアは素っ頓狂な声でそう聞く。俺も何が分からないのかが分からない(?)するとアナリスが


「要するになんでこの世界と異世界の時系列が同じになってるかってことでしょ?」


「そういうこと。聞いた話だと四季や北点や南点もあるんだろ?この世界とほとんど同じなんだよなぁ。魔法がないだけで」


「私もそれは気になってたんだよ。結構似てるよねこの世界。文明レベルは俄然違うけど」


アナリスが話すと誰も話題を思いつかないのか一気にシーンとなる。俺が悪いわけではないがなんとなく気まずい。そうこう考えていると目的地にはついていた。


「ホテルはここだ。金は払っといてくれ。早速俺行かなきゃいけない」


「いってら〜」


俺はそう言うとヒカルは手を降って足早に去っていく。

_________________

彼らと別れて20分くらいだろうか。京急蒲田駅に着いたのは。


京急蒲田駅から品川駅。品川駅から東京駅。東京駅から群馬県高崎駅。


計3つの乗り継ぎを繰り返した先からはバスからバスへと乗り継ぎ、山奥へと行かなければ行けない。そこからは歩き。ここまで3時間を要したため日が暮れそうになっている。


目的地に着いた頃には太陽は既に地平線とほぼ同一線上に存在していた。


目の前には一軒家。小綺麗だが周りの雑木林のせいで幽霊屋敷にも見える。人が住んでそうな痕跡としては庭や屋根に置いてある太陽光パネルが唯一というくらいか。


ヒカルは取り付けてあるインターフォンを鳴らす。だがしばらく家主が家から出てこないことは知っている。この対処法はしばらく時間が経ってからまたインターフォンを鳴らす。それだけだ。


すると家主は家の扉をギッーと音を立てながらあける。ぼさぼさした黒髪と家の中なのに帽子をつけた10代程度の少年が出てくる。


「……また面倒事か?断るぞ」


「そう言わずに頼む」


俺はわざとらしく手を合わせる。しかし少年は無表情のままこちらを見ている。


「…入れ」


「お邪魔しま〜す。彼女いるぅ?」


「…いるよ」


俺は気楽に家の中に入る。靴を脱いで玄関に立つとアパートのように居間がいきなり現れる部屋となっている。その中にはゲーマーが使いそうなパソコンとキャスター付きの椅子。そしてWiFiのサーバーが目に入る。真ん中には申し訳程度のちゃぶ台も置いてあるが。


「まだきれいに保ってんのね」


「…当たり前だろ。ここがなくなったらホームレスになるからな」


「へ〜…本題に入っていい?」


「嫌だ」


「ユウタ君、話くらいは聞いてほしいんだが」


「めんどい」


目の前の男、大須裕太は無愛想な返事をする。


「はいはい。まだ話さないよまだね。それで彼女は?」


「まだ寝てる」


「へ?今午後6時だぞ」


「多分もうすぐ起きる」


ユウタは彼女の生活習慣を知っているのか特に動じる様子はない。


すると襖のある部屋から物音がする。何かが跳ねのけられる音。そして勢いよく襖の扉が開けられる。


「…おはよって、あっ!久しぶりじゃん来たの!」


彼女は微笑んで俺を迎えてくれた。






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