第55話 日本帰還

2022年7月15日 日本標準時

午前10時31分

日本 東京都大田区 羽田空港

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俺達は!一体!何回!飛行機に乗ればいいんだ?


そう思ったのはこの羽田空港に着いた時からだ。もはや慣れすぎて耳のキーンもすっかり耐性がついている。


飛行機が苦手だったアナリスも慣れすぎてケロンとしているではないか。だが飛行機に乗ったことないやつが一人いてな…


「おrrrrrrrr」


キルアは当然のように飛行機のトイレで吐いていた。そして今、彼女の顔は真っ青であり、しっかりとえずいている。


「もし私達の世界に飛行機があったら多分こんなもんじゃ済まされないね」


「なんだアナリス?お前らの住んでた異世界って広いのか?」


「ざっと地球の面積の3倍」


「…重力とかどうなってんだ?」


「軽いよ。この星は」


もはや世界ではなく星になっているが気にしたら負けだ。


「それでこれから俺達どうするんだよ?ヒカルは何かあてがあるって言ってたけど」


「あぁ…悪いしばらく一人になっていいか?ある人物に会いに行くんだがそいつ人間不信でさ」


「?」


「てな訳でもう少しの間ホテルに泊まっといてくれ。お金は…」


「おいおい待て。まず誰に会いに行くんだ?どこに行くんだ?」


「落ち着くんだガイム。連絡はどうやって取ろうか…」


なんだかヒカルは勝手に話を進めているぞ。

カノンとキルアも困惑している。


「連絡なら公衆電話か…でも東京にあるかな?」


「適当にガラケーでも買えば?」


「あぁ…それだ!」


アナリスが言うガラケーとは何なのだろうか…?


「つな訳で…行くぞ買いに」


こうして俺達はスピーディーに買い物をすることになった。

________30分後________

てな訳で某電気店にて売ってあったガラケー2000円を買ったわけだ。


「なんというか使いずらい」


最初にガラケーを手にしたアナリスはそう嘆く。


「スマホとかだといろんな手続きがあるからな…すまんがそれで我慢してくれ」


ヒカルはそう言うとアナリスにガラケーの使い方を教える。


「あの…私達はどうするんですか?」


「そーだよ。おめぇどっか行くんだろ?あたし達置いて行くんだろ?」


「ホテルに泊まるって言っても俺達金持ってないぞぉ〜」


俺は彼らに同調すると


「お金…アナリス魔法で誤魔化しを…」


「えぇ〜あんましたくないんだけどなぁ。魔法律で禁止されてるし」


「魔法律?まぁ言葉の意味どおりか。でも代大丈夫。この国はそんな法律はないのさ」


「そー言われればなぁ…まぁいいか」


こうして俺達はとうとう犯罪に手を染める(今までしなかったんだぞ)かと思いきや


「ほい」


アナリスはそう言うと右手に金色に光らせる。周りの人に見えないように左腕で隠す。


「今から錬金術する」


「「「は?」」」


アナリス以外が「は?」と言う。錬金術って…


「錬金術って禁止されてませんか?」


「うん。けど大丈夫だ問題ない」


アナリスはかっこうつけたのか笑いながらそう言うと…握りしめた手を開き、手を開ける。


そこには金塊…ではなく日本円の500円玉がジャラジャラと鳴りそうなほどある。


「……まずいのでは?」


「バレなきゃ大丈夫な世界だろここは?」


俺が心配の声を上げるがアナリスの意味不明理論によってかき消される。


「犯罪ですよ…これは…駄目です」


「待て。何故盗賊は見逃して私は見逃せないんだ?」


…あ、そうだ。隣には大盗賊改めて犯罪者がいた。


「あたしが悪いみたいに言うなよ!こっちも生活のためにやってんだ!」


キルアが声を上げたせいで周りの人達がざわめく。


「お前なぁ」

 

ヒカルはそう言うと「一旦退散」と言って速歩きでその場を離れる。俺達も跡をついていく。


俺達はヒカルに追いつくと、アナリスは歩きながらヒカルに話しかける。


「誰かに会いに行くって私達の正体はどうするの?」


「大丈夫大丈夫。バラさないから。こう見えても秘密主義者なんで」


「へぇ。めっちゃ不安だけど仕方ないからいいや」


アナリスは意外とアバウトに返事をする。


歩きはじめると人手が多い交差点へとぶつかる。そこで俺はこの日本という最初に転生してまったく懐かしさを感じない場所に帰ってきたことを実感した。

 






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