第41話 異世界人

ガタンゴトン、ガタンゴトン。


白を基盤に赤の模様が描かれ、【ice】とある電車は揺れだした。速度はまだ発進したばかりでそこまで出ていない。


俺達は向かい合うそれぞれ2つの席に座っている。窓側は俺とアナリス、俺の隣にはヒカルがいて、斜め直線上にはカノンがいる。


「19.44ユーロ…ドル…換算…」


ヒカルは何やら計算をしていて独り言をぶつくさ言っていて気持ちが悪い。

カノンもヒカルの言動には引いている様子だ。

《EU諸国はユーロだが、アメリカはドルだぞ!》


ガタンゴトンの音は次第に波打つような音から変わっていき、常に一定の周波数の音のようになり続けるまでに速度は上がった。飛行機でもそうだが、これといって地面が浮き上がる気がしないのが不思議だ。


俺はこの電車の揺れで平和というものを実感する。これから先もこの調子でいいのに…



気がつくと俺はヒカルに体を揺すられていた。


「おーい、ついだそぉ。ったく2時間半もよく寝れるよ」


「ほんと。私とカノンはただただ外の景色を見てたってのに」


「昨日眠れなかったのですか?」


皆からいろんなことを言われるが、脳の処理が追いつかない。はぁ、そうですかとしか言いようがない。


「まぁガイムに一応説明すると、この街にいるよ、私達と同じ境遇の人が。2分の1の当たりを引いたってわけ。つまり中国大陸にいるのは人型の魔王の幹部だろうね。いやぁ、結構無責任というかなんというかなことをしたと思ってるよ、今は」


「……あ、そうなん」


「…早く目覚ましてね。皆電車から出てるからね」


アナリスにそう言われると、めんどくさいが体を起こすことにする。


シュツットガルト中央駅。造りとしてはミュンヘンとは違い、柱のような構造物が建物を支えている。いわば宮殿のようだ。


「…それでどこなんだ?その異世界人は?」


「すぐそこだよ。私についてきて」


俺が聞くと、アナリスは振り向き様に答える。


そしてついていくこと10分。


俺達はある場所に来ていた。その場所は大きな窓と、大きな建物には決まってある黒ガラスの自動ドア、街路樹との距離は5mくらいで、周りの道路には黄色いバスや様々な車が右車線を走っている。


「ここは…病院だ…」


「病院?俺達の世界じゃあ赤の十字架が掲げられてたんだけど」


「俺もそういうイメージだな。てかガイム。お前らの世界でも赤の十字架なんだな…」


「ねぇ、とりあえず入ってみない?」


アナリスはそう言いながら勝手に入っていく。


「あいつ早えよ」


ヒカルもあとについていっているので俺とカノンもついていく。


なんやかんやで《作者が内装を知らないし、病院のシステムも知らないので》俺達はシュツットガルト郊外で突然ぶっ倒れた患者の部屋へ行けるようになった。


横へスライドするドアをアナリスが開く。

するとなんと驚き!

枕が飛んできたのだった。


「なんだ!?お前ら!?誰!?なんだ!?」


その時俺達4人の頭に浮かんだ考えは共通だった。


(うわ~、なんかめんどくさそう~)


「あぁ、落ち着け…日本語でいいんだよな

?」


「ノープロですよ。ヒカルさん」


「そっすか。アナリスさん…さてと」


「うへぇ?へぇぇ~?」


そう言ったのは、目の前にいるいかにも間抜けそうな少女だ。9~10歳くらいの身長で、紅色の髪をしている。

服装は廊下ですれ違った人と同じ入院患者用の服を着ている。


「は!?さてはお前ら冒険者だな!?私を捕まえに来たってか!?」


「おいなんでそうなるんだ?」


「お前らからは魔力を感じるぞ!」


その間抜け少女はヒカルを困惑させるのには十分だ。無論俺もアナリスもなんだこいつ!?という目で見ているが、カノンだけは違った。


「あの…私この子どこかで見たことあるような気がします」


「ん?そう言えばあたしもあんたをどこかで…」


そして一時間をおいて


「「ああ!!、もしかして!!」」


「あなた大盗賊のキルアでしょ!?その頬の傷!」


「あんたあたしが王城まで忍びこんだ時にいたやつだな!ここまで来るなんてしつこいやつだな!」


……どうすればいいんだ?これ?

幸いというかこいつが個室で良かった。じゃなきゃあ今頃大変の騒ぎになっていたはずだ。


二人がわーぎゃーわーぎゃー騒いでる時間は3分間にも及んだ。













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