第33話 アフガニスタン(4)

「なんだあれは!?」


「おい、しっかりしろ!」


「全員退避!退hのわあああ!」


「撃てぇ!撃t…」


兵士達は次第に倒れたり、退避していく。サソリは周りにあるF-16や蛍光灯に向かって手当たり次第に火の玉をぶつける。

横転するF-16。倒れる蛍光灯。


それらが退避している、もしくは縦横無尽に動き回るサソリ達に撃つ兵士達の邪魔をする。


もはや現場の近くは混沌とした状態だ。

それは上空を飛ぶコマンチのパイロットも同じだ。


「こちらリッター1リッター1。緊急事態発生だ!基地が襲撃された!もう既に何人も巻き込まれてる。応援部隊を頼む!」


『リッター1!リッター2奴らをなんとしてでも止めろ!武器の使用は許可する!』


「こちらリッター1。了解した!」


コマンチは一匹のサソリをロックする。


そのサソリの周りには兵士がおらず、巻き込む心配がないからだ。


もともと偵察が目的だったコマンチの武装は、対戦車用のヘルファイアミサイルは2つしか搭載していなかった。


サソリに対してロックオンをしようとするが、素早く動くサソリに合わせられない。


その時どこから現れたのかも分からない別のサソリがコマンチの真下から現れ、コマンチに張り付く。


サソリはコマンチに張り付いたまま火の玉を撃ち、コマンチの機体は不安定となる。


「こちらリッター1リッター1。メイデー!メイデー!メイd…」


リッター1はその機体を再び安定させることができずに地面に激突し、燃料が摩擦熱によって引火したのだろうか。それともヘルファイアミサイルに引火したのかは分からないが、コマンチは辺り一体に響くほどの大爆破を起こす。


そして炎上したコマンチの中からはサソリがヌッと出てくるのであった。

____________________

「装甲車はないのか!」


「衛生兵!衛生兵はどこだ!」


「建物の影に隠れろ!ベースアタックだ!」


現場に向かった兵士が反対方向に逃げながら様々な事を言っているのを聞きながらアレックスは現場の様子を見ていた。

サソリはすぐそこまで迫ってきている。

アレックスはロイド達に向かって言う。


「ハンヴィーの影に隠れろ!急げ!」


「一体何が起きてんだ!?」


ロイドは困惑の声を上げながらハンヴィーの影に隠れる。ヘルメットをつけてないその額には大量の汗がこびりついている。それにルーカスとコナーが近づく。

だがコナーは少し遅れてしまう。

それが祟ったのか突如爆音が辺りに響き渡る。

アレックスがハンヴィーの窓越しから見ると、上空を飛んでいたコマンチが墜落し、

大爆破、炎上していた。


コナーは爆音に気をとられていた。いや、この場にいる兵士全員が気をとられていた。

横から近づくサソリに気がつかなかったのだ。


サソリは飛びあがり、ルーカスに自身のハサミを突き立てようとする。

コナーはかろうじて避けるが、サソリは間髪なく襲いかかる。


兵士達はコナーを助けるため、サソリに銃を向けたが、それより早くコナーが腰のガンベルトに手をかけ、M9を取り出し、躊躇なく発砲する。

「うらあああ!」と言いながら2発連続で発砲したコナーの顔にサソリの体液が降りかかる。

撃たれたサソリは仰向けに倒れ、動かなくなる。


ロイドがサソリの様子を確認するなか、アレックスはコナーへ近づく。

サソリの青い体液がコナーのアフリカ系特有のムキムキの体を強調させる。


「コナー!?大丈夫か?こっちだ!」


「おい!あいつ、あいつ!死んだのか?」


コナー自身は大丈夫そうだ。サソリが死んだのかを確認している。問題はサソリのほうだ。


「死んでるぞ。多分。にしてもなんだこの化け物は…」


そう言った後、ロイドは自身の持っているM4をサソリに向かって撃つ。5.56m弾がサソリの腹の部分を貫き、そこから青い体液が流れ落ちる。


「こんな生き物見たことねぇ!何なんだこれ!」


隣ではルーカスが喚いている。


「ロイド、あと何匹こんなやつがいそうだ?」


「さっき見た感じじゃあ5匹以上はいたな。どっから現れるか分からねぇから常に警戒しとかねぇと」


その時、ヒューンという音ともに何かがこちらへと飛んで来る。


咄嗟にアレックス達は身を屈める。その何かはハンヴィーへとぶつかる。いや突き刺さる。

アレックスはぶつかった物を確かめようと顔を上げる。そこにあったのはパネルだ。

鉄製のパネルがどうやら吹っ飛んで来たらしい。だがハンヴィーが盾となったことでアレックス達は傷を負うことはなくなった。

だがハンヴィーが使えなくなった以上、徒歩で移動するしかなくなった。しかもハンヴィー搭載のM2重機関銃までもがパネルによって使えない状態にあった。


「おいおいまずいぞ…サソリ1匹倒してもまだ5匹以上いやがるぜ…」


ロイドは悲痛そうな表情でそう言う。

アレックス自身もこの状況は最悪であった。

アレックス達以外の兵士は、建物の裏や中に退避している。だがサソリはそれを良しとせず、建物を登って攻撃している。


アレックスは今の状況を知ろうと無線を急いで取り出す。


「こちらアレックス中尉!誰か答えれる者はいるか!?」


ジジッと少し鳴った後、無線の向こうから声がする。


『誰か!応援部隊を頼む!奴らライフルが効かない!』


「何!?ロイド!何か弱点があるはずだ。確かてくれ!」


アレックス達はその言葉を聞いて困惑する。何故なら目の前には拳銃2発で死んだサソリがいるからだ。


ロイドはその言葉通りに確かめる。ロイドが死体撃ちした弾丸もサソリには効いていた。 だが拳銃2発でも死ぬということは、その撃った場所が弱点だ。そしてロイドは言う。


「腹と口の部分だ!目と目の真ん中より下の方!」


「本当だな!?腹と口の部分だ!伏せて狙え!俺達も援護に向かう」


『腹と口の部分が弱点だ!全員そこを狙え!応援部隊が来るぞ!』


無線越しにその声が聞こえる。どうやら伝わったみたいだ。


「俺達も向かうぞ」


アレックス達も立ち上がる。














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