第32話 アフガニスタン(3)

警報が鳴ってからすぐに兵士達が対応するまでには時間がそうかからなかった。


現在彼らはニューヨークについての事件を詳しく知らない。曖昧に伝え、今は任務に集中してもらうためだ。そして彼らは時期に本国へと帰還する。


もともとアフガニスタンは政権交代のイザコザと大統領の方針で米軍の撤退が進み始めていたのも理由の一つである。


M2重機関銃のとりつけられたハンヴィーが多数現場へと向かう。


まず最初に現場に到着したのは5台のハンヴィーとそれに乗っていた、もしくは走って来た25人程の兵士。全員砂漠の砂の色と同化できるような迷彩防護服とヘルメットを着ていた。


兵士達はそれぞれアサルトライフルのM4やM16などを装備していた。中にはM26手榴弾を持っている兵士もいる。


その頃には砂ぼこりは既に基地へ到着せんとばかりに近づいていた。


そして砂ぼこりは到着する。鉄製のフェンスに砂がザザッと襲いかかる。

そしてその砂はハンヴィーや兵士達にも襲いかかるが、ただの砂だ。腰から下の方までしか砂はなく、致命傷にはならないが、兵士達の視界は悪くなる。


10秒くらいだろうか。砂ぼこりが兵士達を襲ったのは。その間にも2台のM939 5tトラックがやって来て合計20人の兵士を下ろす。


ハンヴィーの機銃は砂ぼこりの中心に焦点を常に合わせる。


そして完全に砂ぼこりは止んだ。その間にも後ろからハンヴィーや兵士達が走ってこちらへやって来ている。


兵士達と鉄製のフェンスとの距離は10m。

距離はしっかりととっている。


砂ぼこりはもう襲ってこない。砂は完全に止んだのだ。そして上空を飛ぶコマンチの羽音しかしないことが兵士達に緊張感を与える。

兵士達は砂ぼこりの中心に照準を合わせ、狩りをするかのようにじっと待つ。


ブオ~。

生暖かい風が兵士達の足元を通り抜けて行く。


その時だ。突如フェンスの先の砂が舞い上がり、そこから何かが高さ3mはあるフェンスを飛び越える。兵士達は思わず目を瞑る。


そしてその何かはフェンスを飛び越え、基地の中へ入ると、ハンヴィーや兵士達に一気に駆け寄る。


その何かは黄土色のサソリ。だがただのサソリではなく、大きさは成人男性の胸くらいまであり、シマウマのような目を持っている。


兵士達はこの謎の生物に心底驚愕すると、本人の意思ではなく反射的に計8体のサソリ達に銃を向け、撃つ。


だがサソリ達の方が行動するのが一歩早く、サソリ達はハンヴィーや兵士達に対して、自身のハサミを向ける。するとハサミの中からは火の玉が現れ、それをハンヴィーや兵士達に投げつける。


着弾したと同時にその火の玉は花火みたいな爆発を起こし、地面のコンクリートを吹き飛ばす。


これにより現場の部隊は大混乱に陥る。

あちこちで火の玉が放たれ、そして着弾する。

M2重機関銃を撃っているハンヴィーは火の玉が着弾し、横転する。

兵士達は着弾の衝撃で地面に倒れる。


兵士達は距離をとりながらM4やM16を撃とうとするが、サソリのスピードは速く、すぐに距離を詰められる。


そして一匹のサソリがコンクリートの地面に両方のハサミを突き刺すと兵士達がいる場所にピンポイントで花火のような爆発が起きる。


のわぁぁぁ!


兵士達は声にならない叫びを上げ、M939

5tトラックは着弾した部分に黒い焦げをつけガタンと大きく揺れ、コンクリートは砕け散り辺りに散乱する。


コマンチのパイロットはその様子を夢かと疑っていた。コマンチから見える周りの景色は、こちらへ向かって来ていた兵士が驚愕し、既にこの場にいた兵士が退避している。そして周辺にはサソリが縦横無尽に駆け回り、あちこちに向かって火の玉を放っているという混沌とした景色だった。


そう、この日アフガニスタンの辺境の米軍基地は襲撃されたのだ。





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