現代転生 _その日世界は変わった_

胚芽米

プロローグ

だるい。そう感じながら丸石で舗装された道路を歩く。


茶色味がかかった短髪、金属製の厚みの薄い鋼色に輝く鎧を身にまとった中肉中背の


16歳の少年、ガイムはギルドに向かって足を進める。


「はぁ…」


思わずその口から溜息が出てくる。今向かっているギルドでクエストを受注する予定だ。


俯きながら歩いているとギルドに、いつの間にか到着していた。目の前にはレンガ造りの2階建ての建物が建っている。


その建物に入り受付へと向かう。受付には、何人かの職員がいた。



「冒険者の方ですか?本日はどのクエストを?」


受付の女性がそう聞いてくる。



「えっと……それじゃあ…これで」



指を指しながら言ったのは、一番簡単そうな


クエスト、薬草取り。



俺の職業である、冒険者は、魔物退治、要人の護衛、薬草の採集、資源の採掘などを基本的にしている。


最近になって多くなったのが魔王軍の討伐依頼だ。


魔王は、自身の魔物の軍隊を数多の王国や村々を襲わせている魔族の王だ。その正体やいつから現れたのかは、まだわかっていないが、最近になって、その勢力が増大しているらしい。


奴自身は城にこもっており5人の幹部と自身の軍で世界を支配しようとしているとか。


最も幹部の正体すら俺には分からないが。



とにかくギルドに寄せられるそれら様々なクエストを受注して解決する。そして、それに見合った報奨金をもらうというのが、冒険者の仕事だ。



無事に薬草取りのクエストを受注することができた。あとは薬草を取りにギルドを後にしようとする。周辺からはいろいろな声が


聞こえる。



「いつぐらいから彗星が来るんだ?」


「森にすくってた犬共がいなくなったおかげで、薬草採集が随分と楽になったもんだ」


「皆で酒場に行かない?ほら、新しくできた、あそこの…」



…俺には関係ない。人付き合いが苦手というわけではないが、親しくはなれない。どうにも中途半端で終わるのだ。



自身のステータスもそうである。


剣技や魔法の才能


瞬発力や防御力や持久力


自身の魔法使用回数の限界値


それら、全てが中途半端だ。おまけに、頭の 出来も、そこまでよくないときている…



魔法には、それぞれ階級がある。


消費魔力は多いが、その分、効果や威力は絶大な上位魔法。


消費魔力こそ上位魔法より少ないが、それでも効果や威力は強力な中位魔法。


そして、消費魔力が最も少なく、魔法の中でも基礎程度のレベルなのが下位魔法。


また、魔法にも、大きくわけて2つ種類があり、



1つは(技)これは、自身の武技や、道具などを強化するためにかける魔法。



もう1つは(術)これは、様々なものを具現化したり、身体能力の強化や弱体化などをさせる魔法。


もっとも俺は下位魔法しか使えないが。



ギルドに行き来する人の量が増えたので、急ぎ足でギルドを出て、目的地に向かうことにした。



_______________15分後_______________



目的地についた。鎧を来ているせいで、日差しがきつい。



-神聖樹の森- ここはそう、呼ばれている。


高さ5mの細い木々が生い茂り、この場所には、比較的魔物が少なく、薬草が豊富にある場所だ。だが、万事に備え、腰のソードベルトには、銀色に光輝いている、


片手剣を入れている。



薬草は、根から採らなければならない。じゃないと効果時間が短くなるからだ。


こうして採ったやつをギルドからもらった袋の中に入れていく。



抜いて、入れて、抜いて、入れて、また抜いてを繰り返す。


毎日同じ作業の繰り返し。今日は薬草集めだが、他の仕事である魔物退治なんかを一生をかけてする。そんな未来が俺には見えていた。


辞めたくても辞められない。中途半端な俺にはこの仕事しかないのだからだ。



冒険者の仕事は、つまらなかった。飽き飽きとしていた。なにか起きないかな…いっそのこと、別の世界に行きたいな…そんなことを考えていた。



「なんか…おもしれーことないかなぁ~」


思わず呟ていたが、また、せっせと作業に戻る。だが、そんな独り言をしていたからなのか。


ふと、後ろに謎の気配を感じた。


今まで感じたことのないような気配。どんな魔物か分からない。


とっさに剣を抜き出し、そして後ろへと振り返る。




そこに魔物はいなかった。だが、空に巨大な石が浮かんでいる。そして、それは目の前にあった。何かをする暇なく、その石は俺のほうへと近づいてくる。



「あ」



とっさの一言はこれだった。やがて、俺の体は、石へと飲み込まれる。体が潰される感触がする。あたりの木々が倒れる音がする。閃光で目があけられない。


そして


ドドーン!という轟音が周辺を響かせたあと、


俺の意識は、プツンとなくなった。



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