第2話 絶交しました

 


 私は転生者だ。


 乙女ゲームの世界に転生している。


 そんな私は悪役令嬢で、攻略対象である正統派王子の婚約者だ。


「君の美しさは罪だね」とかいう砂糖のように甘いセリフを喋るキャラクターの、だ。嬉しいけど、なんか恥ずい。


 幼少期にその記憶を思い出した私は、バッドエンドルートに入らないように、極力ヒロインの邪魔をしないようにした。


 ヒロインと攻略対象達が仲良くしている時は割って入らずに、見守るだけ。

 ヒロインや攻略対象達が困っていたら、ほどよく手助け。


 ついでに、運命の修正力とかが働いた時、自分の身を守るために、基本スペックも上げておいた。


 勉強・運動・礼儀作法。


 全て合格点を叩き出せるまで練習した。


 けれど、やりすぎてしまったのか、婚約者である正統派王子の性格がひょっとひん曲がってしまったらしい。


 正統派王子は、女に負けたというコンプレックスを抱えに抱え、世間であれこれ悪さをしはじめていたのだ。


 これはいけない。


 という事で散々お説教をした。


「名家のご子息が、そんな体たらくではいけませんわ!」

「お前に俺の何が分かる。お前のせいで、俺の存在はいつもかすんでるってのに!」


 ヒロインをけしかけて、主人公パワーでどうにかできないかとも試してみた。


「彼をはげましてあげてください」

「分かりました。頑張ってみますね」


 でも、だめだった。


 子供の頃から、女性たらしになってしまった正統派王子は、権力や財力を持つお姉さんをたぶらかし、好き放題していた。


 好きな物を買ってもらったり、お姉さんの物を欲しがるくらいはまだかわいげがあるけれど、悪いことをもみ消してもらうというのは駄目だ。


 だから見るに見かねた私達は彼をいさめたのだが。


「そんなの関係ないだろ。ほっといてくれ!」と拒絶される顛末。


 最初の頃は、何とかしようとはしたのだ。

 自分がへたに改変したせいで、そんな風になってしまったのだから。本来の正統派王子は立派な人間なんだし、と。


 けれど彼は、私とヒロインがこっそり飼い始めた子犬の存在を、大人に密告しただけでなく、勝手に川に流した。


 結果、私もヒロインもぶちきれて、正統派王子とは絶交してしまった。


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