ヤンデレあなたこなた「ヤンデロリアン仮説」

 ご無沙汰しております、綾波アヤナミ宗水シュウスイです。

 前回の投稿によって、本作もエピソード40に到達することができました(連作は換算しない)。いつもお読みいただきありがとうございます。


 またカクヨムにおいて本作とは別に、『<ヤンデレ>という文化資本』『ヤンデレが導く評価経済社会』『ヤンデレへの余命宣告』という三作の論評を投稿しているなど、小説という形式にこだわらない、ヤンデレへのかかわりを続けてまいりました。


 本作でも、エピソード30の「ヤンデレあなたこなた・ヤンデレ≒怪談説」として考えを公開していましたので、今回はその前例に則って、評論とはいかない、趣味的な考えをひとつ提唱してみようと思います。


 それが副題「ヤンデロリアン仮説」です。


 これは私が何の気なしに言葉遊びをしている時に気づいた概念であり、「ヤンデレ」と「デロリアン」を接合した造語です。


 デロリアン(DMC-12)とは、1981年から1982年にかけて「デロリアン・モーター・カンパニー(DeLorean Motor Company、DMC)」が製造したスポーツカーであり、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズにタイムマシンとして登場することでも有名です。


 当初は好調な売り上げを記録したようですが、高額さや大量のキャンセルの発生などから、発売翌年以降は売り上げ不振に陥ります。

 やがて、北アイルランドへの工場誘致の条件として交付されていたイギリス政府からの補助金が停止され、後にエンロンの会計監査も行ったアーサー・アンダーセンが、デロリアン社の資金を社長ジョン・デロリアンが私的に流用するなどしたことを黙認していたことがマスメディアの調査などで明らかになり、さらに1982年10月19日に、社長ジョン・デロリアンがコカイン所持容疑で逮捕されるスキャンダルが発生したことで、会社は資金繰りが立ち行かなくなり、倒産に至ったのでした。

 そして同年10月26日にDMCが破産を申請…………


 このように、デロリアンという車は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に大々的に登場しなかった場合、ジョン・デロリアンと共に、一部のマニアに好かれるか、もしくは敗者(廃車)として自動車産業に埋もれていくかというものでした。


 そういった歴史を背景に、ヤンデレの持つ側面の一つである愛のアンバランスさと、デロリアン(DMC-12)の高価に対する欠陥性という観点を合わせて、ヤンデレの愛への理念と現実に及ぼす高コストを考察するもの、それが「ヤンデロリアン仮説」であります。


 またこれは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』における、タイムトラベルというすさまじき科学技術の対価が、プルトニウムなどによる「1.21ジゴワット」という高エネルギーを必要とすることに加え、タイムトラベルには多くの問題と危険性が伴うという展開についても暗喩するものです。


 つまり、ヤンデレに対して寛容(容認)的な態度を示したとき、当人は絶大なる愛を受けることが可能となります。

 これはデロリアンが企画された際、富裕層にとって新しい高級車のシンボルとして歓迎されたことに近いでしょう。


 ですが、それを享受することで、ヤンデレは共依存関係に陥り、デロリアンは幾度の故障という代償が伴い、仮に功利主義的な見方を導入したとき、果たしてそれは損得が釣り合っているのか、少なくとも他者からは否定的に捉えられるのでは、という現実問題に直面するのです。


 そういった、当事者性と社会性との著しい不釣り合いを解消するには、そういった事象すらも包括する、新たなストーリーの到来に他ならないのでは、というのが当仮説の重要部です。


 つまり、生産終了後の映画「バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ」での活躍によって、デロリアンは1980年代を代表する著名なカルトカーとなり、21世紀初頭の現代でも多くの自動車マニアのコレクション対象となっているという事例を参考にするのです。

 ヤンデレをサブキャラやメインヒロインと物語を動かす、言わば「カウンターヒロイン」的存在としてではなく、主要キャラとして登場させる作品の台頭によって、現在にわかに浸透しつつあり、かつまた現実にあまり「良くない」存在として認識されているヤンデレ像を変容し得ると私は考え、ここに提唱します。



 余談ですが、ヤンデレ怪談論の中での「ヤンデレ作品創作者≒怪談師」に準じ、「ヤンデレ作品創作者→ヤンデロリアン・モーター・カンパニー(YanDeLorean Motor Company、YMC)」と呼んでみませんか、と皆様に面白がってもらう余白を残して、今回は失礼したいと思います。

 どうぞ今後とも、お読みいただけると幸いです!

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