週末に読む本

今週末は予定がないので、何か面白い本でも借りようと思って図書館へ行く。

入り口付近の新刊から見ていく。


本のタイトルと作者が書かれたプレートのみがあるので、読書好きが借りているのだろう。


ニュースなんかでは若者の活字離れとは言われているものの、図書館の新刊コーナーが空になるくらいには読書好きもいるのになあと思う。

昔を知らないから何とも言えないが。


新刊は貸し出し中なので、他にめぼしい本がないか当てもなくぶらつく。


気になるタイトルのものを手に取り、あらすじにさっと目を通す。

強く引かれる本があまり見当たらず、図書館の最奥に差し掛かる。

 

奥まで来るとやはり人がほとんどいないなと思いながら、本棚に並ぶタイトルに目をやる。



18時を知らせる音が鳴り、長居しすぎたなと思って時計の方を振り返ると、見たことのない景色に変わっていた。



周りを見渡してみたが、どうやら図書館らしい。


全体的に薄い水色で外からの光がたくさん入ってきており、キラキラと光っている。たった今までいた、よくある茶色い図書館とは似ても似つかない。

 

どこなのかもわからないし、今まで生きていた世界のものかもわからないのに、不思議と怖いとは思わなかった。

 

あたりの本棚を散策する。

ふいに図書館の外はどうなっているのかが気になり、カウンターを探す。

 

するとそこには誰もおらず、「席を外しています」のプレートだけがかかっていた。


出口に向かおうと思い振り返ると、元の学校の図書館に戻っていた。

周りに人はいない。


時計を見ると18時であり、謎の図書館での時間は経ってないようだ。


今見える位置からあたりを見回し、違和感がないか確認する。

図書館自体には特段違うところは見つけられなかった。


自分の体にも異変はなさそうだ。

とりあえず、時間が時間なので、明日改めて本を借りに来ることにして帰宅する。



週末、昼過ぎに目を覚ましてシャワーを浴び、少し早めの昼ごはんを食べる。

一息ついてコーヒーを淹れ、借りてきた本を読もうと手を伸ばす。


そういえば、本を借りようと思って図書館に行った日、一度目はよくわからない図書館らしきところへ出たことを思い出す。

二度目は図書館の奥の方へ行ったが、何事もなくいつも通りの図書館だった。

 

そう思うと、謎の図書館に出たときは本を借りていなかった、出なかったときは本を借りてから図書館を歩いていたからなのか。

しかし、図書館に行ったのはその日が初めてではない。


思ったよりも考え込んでしまっていたようだ。


仕切り直して、借りてきた本を読む。

この世が仮想空間であるという設定の小説だ。


なかなか引き込まれ、あっという間に読み終わってしまった。

タイトルや表紙を見て直感で選ぶのも悪くないなと思いしばらく余韻に浸る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る