ワールドブルー
なまけ猫
出会いの春
桜の花びらががほとんど残っていないころ、坂上優人は不安を抱えながら登校する。
高校2年生になるクラス替えで友人と一緒になれるかという不安だ。
2年生の教室前の廊下で新しいクラスが発表されている。
自分のクラスを探していると、陽介が俺のクラスどこ?と声をかけてくる。
どうやらふたりとも1組のようで、顔を見合わせて少し安堵する。
知り合いで同じクラスになったのは陽介だけだった。
教室に入り、自分の席に着く。
クラスメイトは知り合い同士でしゃべりながらも、他のクラスメイトの様子をうかがっているようだった。
チャイムが鳴り、朝のホームルームが終わり一時間目が始まる。
各科目初めてのコマで自己紹介をさせられる。
もう何度も聞いたので、なんとなくクラスメイトの名前は覚えてきた。
かといって、自分から話しかけるわけではないが。
授業が終わり、陽介がCDショップに寄って帰ろうといった。
ハマっているミュージシャンのCDの発売日で、店舗特典がもらえるらしい。
ファンというほどでもないが、そのミュージシャンの音楽はいいなと思っていたので、二つ返事で了承した。
「えっ?そのミュージション私も好きなんだけど!今日発売なんだ、一緒していい??」
声がしたほうを振り返ると、パーマのかかった明るい髪の小柄な女子がいた。
私は谷口夏美っていうの、よろしく~と続ける彼女は小柄のわりに存在感があり、程よく肉が付きスポーツが得意そうに見える。
目がぱっちりしていて鼻筋も通っていて、目の上で切り揃えられた前髪はよく似合っている。
そんなことを考えているうちに、谷口の友人を含めた4人で行くことになったようだ。
街のモニターにはニュースが流れている。ここ数年で行方不明者が増えているのだが、原因はわからないままだ。
目撃者がいる行方不明者の多くは、みんな口をそろえて「徐々に消えていった」という。
「このニュース、まだ原因わからないままなんだね」
直接消えたところを見たことはないし、消えたのを見たという知り合いもいないので、あまり実感がないと夏美はいう。
僕もそうだ。
初めてそのニュースを知ったときはよくわからないまま姿が消えるということにぞっとしたが、今となってはどこか他人事だと感じてしまっている。
夏美は気を使ってなのか、いろんな話をしている。
陽介は陽介で、ニコニコと相槌を打ちながら話を聞いている。
夏美の友達の怜佳も口数は決して多くはないが、夏美が勘違いしていたり言葉に詰まると訂正したり代弁したりと、会話のテンポがよく、本当に仲がいいんだなと思う。
店につくと陽介は一目散に目的のコーナーへ行く。
僕は視聴コーナーで新曲を聞いてみる。
やはり、今までの曲もよかったが、新曲もいい。買って帰ろう。
各々目的を果たしたようなので、ファーストフード店によることにした。
各々が戦利品を確認しながらだべっている。
CDジャケットと同じ大きさのデザインカードとステッカー。
何パターンかあるようでデザインカードは陽介と怜佳が同じだったようだが、ステッカーはみんな違うものだった。
店員さんが気を利かせてくれたのだろう。
気が付くと外は暗くなり始めていて、お開きの流れになる。
駅に向かう途中、黒のロングコートを着た猫背の人物がこそこそと路地に消えていくのが目に入った。
街並みと違和感があるにしても、あたりで事件があった様子はないので、まあいいかと思い、会話に混じる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます